大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
27.形を変えながら、続いていくものなのだろう
週末になり、江陽とのデートは――ジュエリーショップからだった。
「……今度こそ、ゴネるなよ」
「わ、わかってるってば!」
車を降り、私は、目の前にそびえたつ建物を見上げる。
――ブランド品は、無理。
――桁がおかしいのも、論外。
――普段使いしても気にならない、シンプルなデザイン。
その条件を満たす店を数軒ピックアップした江陽は、昨夜、サイトのURLと、その中から選べ、と、メッセージを送ってきた。
私自身、こういうものに疎いので、それは助かるのだが――。
――昨日の今日で、買う気なの、アンタは⁉
「何やってんだよ、行くぞ」
「――……う、うん……」
若干、怖気づいてしまうが、先日の翔陽くんと入ったジュエリーショップと似たような雰囲気だったので、何とか足を進める事ができた。
「目星はついてんだろ?」
「い、一応……」
私は、昨夜眺めていたラインナップの中、非常にシンプルな、小さいダイヤのついたプラチナの指輪を見つけ、値段を確認。
自分でも買える金額にホッとしながら、ヤツに、大丈夫、と、送っておいたのだ。
そして、接客に出てきてくれた女性店員に、江陽は営業仕込みの愛想の良さで、あれよあれよという間に、ショウケースの上に様々な指輪を出してもらっていた。
「羽津紀、昨日見てたヤツ、この中にあるか」
「え、あ」
私は、恐る恐るヤツの陰から顔を出し、ジッと指輪を眺める。
そして、その中の一つと、昨夜のカタログのものが一致したので、控え目にそれを指さした。
「……その、右から二番目……」
「こちらでございますね?」
店員はそう言って、私に指輪を差し出す。
「当店でも人気の商品でございますよ。ダイヤは小さいですが、存在感の出るカットにしておりますし、男女ともに抵抗なくお使い頂けるデザインでございます」
スラスラと説明されるが、完全に右から左。
けれど――もう、ためらう理由など、無いのだ。
私は、江陽を見上げ、うなづいた。
「――じ、じゃあ、コレ……カードでお願いします」
「おい、コラ、羽津紀!買うのは、オレだろ‼」
恐る恐るバッグから財布を出そうとした私は――即座に江陽に突っ込まれ、慌てて手を引っ込めたのだった。
「……羽津紀……お前なぁ……」
「わ、悪かったわね!基本的に、買ってもらうっていう頭は無いのよ、私は!」
「だからって……」
車を走らせながら、江陽は、あからさまにため息をつく。
先ほどの店でのやり取りを、まだ引っ張っているのだ、コイツは。
「――さすがに、恥ずかしかったぞ」
「悪かったって言ってるじゃない!」
私だって、あの、店員さんのあっけに取られた顔と、その後の皆さんの生温かい視線には、やらかした、と、思ったけれど!
「……もう、いい」
「え」
「――……それが、お前だもんな」
「……そうよ、文句があるなら――」
別れる、と、言いかけ、言葉は喉の奥に引っ込んだ。
それに気づいたのか、江陽は、苦笑いを浮かべ、私の手に自分のものを重ねる。
「……もう、言えねぇよな?別れる、なんて」
「……うるさい、バカ江陽」
私は、そのままヤツの手に指をからめた。
「――う……」
「……何よ」
「……いや」
江陽は、うれしそうに口元を上げると、力を込める。
そして、私の左手の薬指を、チラリと見やり、口元を上げた。
そこには、店頭で半強制的にはめられた指輪が光っている。
「……やっと――あげられた」
「――……うん」
私はうなうづいて返すが、すぐに眉を寄せた。
「羽津紀?」
「……でも、何で、お店で着けさせるのよ、アンタは……」
ムードが欲しい訳では無かったが、それでも、公衆の面前では、さすがに恥ずかしさが勝った。
けれど、ヤツは、ケロッとして返す。
「だって、一秒でも早い方が良いじゃねぇか」
「――……っ……!」
瞬間、真っ赤になった私に、ヤツは、うれしそうに微笑んだ。
「……今度こそ、ゴネるなよ」
「わ、わかってるってば!」
車を降り、私は、目の前にそびえたつ建物を見上げる。
――ブランド品は、無理。
――桁がおかしいのも、論外。
――普段使いしても気にならない、シンプルなデザイン。
その条件を満たす店を数軒ピックアップした江陽は、昨夜、サイトのURLと、その中から選べ、と、メッセージを送ってきた。
私自身、こういうものに疎いので、それは助かるのだが――。
――昨日の今日で、買う気なの、アンタは⁉
「何やってんだよ、行くぞ」
「――……う、うん……」
若干、怖気づいてしまうが、先日の翔陽くんと入ったジュエリーショップと似たような雰囲気だったので、何とか足を進める事ができた。
「目星はついてんだろ?」
「い、一応……」
私は、昨夜眺めていたラインナップの中、非常にシンプルな、小さいダイヤのついたプラチナの指輪を見つけ、値段を確認。
自分でも買える金額にホッとしながら、ヤツに、大丈夫、と、送っておいたのだ。
そして、接客に出てきてくれた女性店員に、江陽は営業仕込みの愛想の良さで、あれよあれよという間に、ショウケースの上に様々な指輪を出してもらっていた。
「羽津紀、昨日見てたヤツ、この中にあるか」
「え、あ」
私は、恐る恐るヤツの陰から顔を出し、ジッと指輪を眺める。
そして、その中の一つと、昨夜のカタログのものが一致したので、控え目にそれを指さした。
「……その、右から二番目……」
「こちらでございますね?」
店員はそう言って、私に指輪を差し出す。
「当店でも人気の商品でございますよ。ダイヤは小さいですが、存在感の出るカットにしておりますし、男女ともに抵抗なくお使い頂けるデザインでございます」
スラスラと説明されるが、完全に右から左。
けれど――もう、ためらう理由など、無いのだ。
私は、江陽を見上げ、うなづいた。
「――じ、じゃあ、コレ……カードでお願いします」
「おい、コラ、羽津紀!買うのは、オレだろ‼」
恐る恐るバッグから財布を出そうとした私は――即座に江陽に突っ込まれ、慌てて手を引っ込めたのだった。
「……羽津紀……お前なぁ……」
「わ、悪かったわね!基本的に、買ってもらうっていう頭は無いのよ、私は!」
「だからって……」
車を走らせながら、江陽は、あからさまにため息をつく。
先ほどの店でのやり取りを、まだ引っ張っているのだ、コイツは。
「――さすがに、恥ずかしかったぞ」
「悪かったって言ってるじゃない!」
私だって、あの、店員さんのあっけに取られた顔と、その後の皆さんの生温かい視線には、やらかした、と、思ったけれど!
「……もう、いい」
「え」
「――……それが、お前だもんな」
「……そうよ、文句があるなら――」
別れる、と、言いかけ、言葉は喉の奥に引っ込んだ。
それに気づいたのか、江陽は、苦笑いを浮かべ、私の手に自分のものを重ねる。
「……もう、言えねぇよな?別れる、なんて」
「……うるさい、バカ江陽」
私は、そのままヤツの手に指をからめた。
「――う……」
「……何よ」
「……いや」
江陽は、うれしそうに口元を上げると、力を込める。
そして、私の左手の薬指を、チラリと見やり、口元を上げた。
そこには、店頭で半強制的にはめられた指輪が光っている。
「……やっと――あげられた」
「――……うん」
私はうなうづいて返すが、すぐに眉を寄せた。
「羽津紀?」
「……でも、何で、お店で着けさせるのよ、アンタは……」
ムードが欲しい訳では無かったが、それでも、公衆の面前では、さすがに恥ずかしさが勝った。
けれど、ヤツは、ケロッとして返す。
「だって、一秒でも早い方が良いじゃねぇか」
「――……っ……!」
瞬間、真っ赤になった私に、ヤツは、うれしそうに微笑んだ。