大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「……本っ……当に、良いんだな?」
「良いって言ってるでしょ」
翌週末――土曜日。
私は、江陽の家にお邪魔し、ヤツの部屋で一緒に、テーブルに置いた婚姻届けをにらみつけていた。
結局、式は挙げず、ドレスの写真撮りだけにするつもりだと言ったら、やはりと言うか――ヤツにしつこいくらい、確認された。
「……別に、ウチの方は、招く人なんて大していないし……」
「そうは言ってもよ……おばさんとか、気にするんじゃんねぇのか」
私は、苦笑いで首を振った。
「確認したわよ、一昨日の夜。――もう、結婚するだけで良いって、何だか、悟ったように言われたわ」
「……え」
「――逆に、もう、早いトコ、既成事実作れって急かされたわよ」
「……おばさん……」
少々引きつりながら、ヤツはようやくうなづいた。
――どうやら、自分のトコより、ウチの方を気にしていたようだ。
「……じゃあ……書くぞ」
江陽は、かなり緊張した面持ちで、ボールペンを持った。
「気合入れるものでもないでしょうに」
「失敗できねぇだろ!」
「あら、予備に、あと二枚もらってるわよ?」
「おい⁉」
ギョッとした江陽を見て、私は、笑う。
――その瞬間――グラリ、と、視界が歪んだ。
……え?
「羽津紀っ⁉」
かろうじて江陽が抱き留めてくれたおかげで、倒れずに済んだが――平衡感覚がおかしい。
「おい、大丈夫か⁉」
私は、ゆっくりと、ヤツの腕に縋り付く。
「羽津紀」
「……ご……ごめん、なさ、い……」
「いいから――横になるか」
そう勧められ、うなづくが――今度は、吐き気だ。
――何、コレ。
胃の奥からこみ上げてくるものが、とうとう我慢できず、江陽に支えられ、トイレで吐くという大惨事を引き起こしてしまった。
「羽津紀ちゃん、大丈夫⁉」
すると、事態を深刻に感じたのか、亜澄さんが様子をうかがいに部屋にやって来てしまったので、私は、謝ろうと起き上がる。
「……亜澄、さん……。……す、すみません……」
「ダメよ、起きちゃ。横になってて!」
すると、すぐに彼女に止められ、ベッドに逆戻りさせられた。
「具合が悪かったのに、江陽が、無理させてたんじゃない?ごめんなさいね」
「い、いえ。……さっきまでは――大丈夫でした」
そう言って、私は、緩々と首を振る。
亜澄さんは、眉を下げ、私を見やった。
「羽津紀ちゃん、気を遣わないでね。――やっぱり、いろいろあったせいで、張り詰めていたものが切れたのかもしれないし」
私は、その言葉にうなづく。
――これまでのジェットコースターのような時間を考えたら、知らず知らずのうちに負荷がかかっていたのかもしれない。
「落ち着いたら、今日は、もう、江陽にお家まで送らせるから。ゆっくり休んで?」
「――ありがとうございます」
そして、亜澄さんは、後ろで様子をうかがっていたヤツを振り返る。
「江陽、車出せるようにしておきなさいな」
「わかってる」
うなづいたヤツは、既に、車のキーを持っていて、彼女に見せた。
少しの間、横になっていると、ようやく波が引いたのか、ゆっくりとだが動けるようになった。
私は、帰り支度をしながら、眉を下げて江陽を見上げる。
「……婚姻届け、また、今度で良いかしら……」
すると、ヤツは、あっさりとうなづく。
「当たり前だろうが。お前の具合の方が優先だ」
「……ありがとう」
当然のように言われるのが、うれしくて――泣きたくなってしまった。
――大事にされている。
――それは――もう、疑いようもなかった。
「良いって言ってるでしょ」
翌週末――土曜日。
私は、江陽の家にお邪魔し、ヤツの部屋で一緒に、テーブルに置いた婚姻届けをにらみつけていた。
結局、式は挙げず、ドレスの写真撮りだけにするつもりだと言ったら、やはりと言うか――ヤツにしつこいくらい、確認された。
「……別に、ウチの方は、招く人なんて大していないし……」
「そうは言ってもよ……おばさんとか、気にするんじゃんねぇのか」
私は、苦笑いで首を振った。
「確認したわよ、一昨日の夜。――もう、結婚するだけで良いって、何だか、悟ったように言われたわ」
「……え」
「――逆に、もう、早いトコ、既成事実作れって急かされたわよ」
「……おばさん……」
少々引きつりながら、ヤツはようやくうなづいた。
――どうやら、自分のトコより、ウチの方を気にしていたようだ。
「……じゃあ……書くぞ」
江陽は、かなり緊張した面持ちで、ボールペンを持った。
「気合入れるものでもないでしょうに」
「失敗できねぇだろ!」
「あら、予備に、あと二枚もらってるわよ?」
「おい⁉」
ギョッとした江陽を見て、私は、笑う。
――その瞬間――グラリ、と、視界が歪んだ。
……え?
「羽津紀っ⁉」
かろうじて江陽が抱き留めてくれたおかげで、倒れずに済んだが――平衡感覚がおかしい。
「おい、大丈夫か⁉」
私は、ゆっくりと、ヤツの腕に縋り付く。
「羽津紀」
「……ご……ごめん、なさ、い……」
「いいから――横になるか」
そう勧められ、うなづくが――今度は、吐き気だ。
――何、コレ。
胃の奥からこみ上げてくるものが、とうとう我慢できず、江陽に支えられ、トイレで吐くという大惨事を引き起こしてしまった。
「羽津紀ちゃん、大丈夫⁉」
すると、事態を深刻に感じたのか、亜澄さんが様子をうかがいに部屋にやって来てしまったので、私は、謝ろうと起き上がる。
「……亜澄、さん……。……す、すみません……」
「ダメよ、起きちゃ。横になってて!」
すると、すぐに彼女に止められ、ベッドに逆戻りさせられた。
「具合が悪かったのに、江陽が、無理させてたんじゃない?ごめんなさいね」
「い、いえ。……さっきまでは――大丈夫でした」
そう言って、私は、緩々と首を振る。
亜澄さんは、眉を下げ、私を見やった。
「羽津紀ちゃん、気を遣わないでね。――やっぱり、いろいろあったせいで、張り詰めていたものが切れたのかもしれないし」
私は、その言葉にうなづく。
――これまでのジェットコースターのような時間を考えたら、知らず知らずのうちに負荷がかかっていたのかもしれない。
「落ち着いたら、今日は、もう、江陽にお家まで送らせるから。ゆっくり休んで?」
「――ありがとうございます」
そして、亜澄さんは、後ろで様子をうかがっていたヤツを振り返る。
「江陽、車出せるようにしておきなさいな」
「わかってる」
うなづいたヤツは、既に、車のキーを持っていて、彼女に見せた。
少しの間、横になっていると、ようやく波が引いたのか、ゆっくりとだが動けるようになった。
私は、帰り支度をしながら、眉を下げて江陽を見上げる。
「……婚姻届け、また、今度で良いかしら……」
すると、ヤツは、あっさりとうなづく。
「当たり前だろうが。お前の具合の方が優先だ」
「……ありがとう」
当然のように言われるのが、うれしくて――泣きたくなってしまった。
――大事にされている。
――それは――もう、疑いようもなかった。