大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
 その日は、結局、動くのもおっくうで、夕飯も聖に頼んで作ってもらったくらいだ。

「羽津紀ー、こんな感じで良いかなぁー?」

 私の部屋のキッチンに立った彼女は、恐る恐る、出来上がったおかゆを持ってきた。
「ええ。――上手にできてるじゃない」
「ありがと。……でも――本当に、大丈夫?」
「……まあ、疲れが出たのかもしれないから……」
「いろいろあったもんねー」
 苦笑いでうなづき合い、お互いに食べ始める。
 聖は、自分で作り置きしていた、なす味噌炒めだ。
「本当は、羽津紀に味見してもらいたかったんだけどー……気持ち悪いんじゃ、ダメだよね……」
 しゅん、と、しながらも、聖はご飯を食べ進める。
「ごめんなさいね。すぐに治ると思うから――」
 私は、そう言いながらも、彼女の半分ほどのペースで、ご飯茶碗一杯のおかゆを食べていく。

 ――何だか――食が進まない。

 それに、未だ、平衡感覚は、おかしいまま――。


 ――自覚が無いだけで、相当疲れていたのか、私は。


 ――……そう、思いながら過ごしていた。



 翌週になっても、具合が良くなる気配もなく――それからは、日々、だるい身体をどうにか動かし、仕事を続ける。

「名木沢クン、ちょっと」

「ハイ」

 昼食後、ひどい眠気に襲われながらも、私は、どうにか、いつもの半分のペースで書類をチェックしていた。
 すると、神屋課長に呼ばれ、打ち合わせスペースへ入ると、すぐさま、眉を寄せられる。

「――社長から、返事の催促が来た訳じゃないんだけど――もう、ひと月近く経つし……そろそろ、決めてくれると、ありがたいんだけどな」

「――……申し訳ありません……」

 確かに――ここ最近の体調不良で、考えたくても考えられなかった――片桐さんの企画案。
 私次第で、進捗が決まるとも言えるのだから、課長が急かすのも無理はない。
 ひとまず、受けるか受けないか――それだけでも決めてほしいという事だ。
「キミもいろいろあるだろうけど、今頑張ってもらわなきゃ、ウチの会社の未来にかかわる」
「そんな大げさな……」
 社長に感化されたのか、課長は、そんな事を言う。
 私は、苦笑いで流そうとするが、真剣な表情で返された。

「大げさじゃない。――キミは、今、そういう立場に立っていると、自覚した方が良い」

「え」

「社長が、こんなにも密にコンタクトを取る平社員は、キミ以外にいないんだから」

「――……そ……」

 ――そんな事は、無い。

 そう言いたかったが――課長の視線に止められた。

「――とにかく、できるかできないか。それが決まらなきゃ、先に進めないと思ってくれ」

「……承知致しました」

 私は、頭を下げ、パーティションから出る。
 チラチラと受ける視線は、いつもの事。
 ――そこに、いろんな好奇の視線があろうが――もう、気にしている余裕は無いのだ。
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