大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
 体調不良で押せ押せになった仕事は、やはり、残業で消化するしかなく。
 毎日の帰宅時間は、十時を過ぎるのも当たり前になってきていた。
 そして、その反動なのか、頻繁に貧血や吐き気が起き、そのせいで押した仕事が更に残業という、負のループ。
 こんな時に――そうは思うが、何せ、自分の身体なのに思うようにいかないのだ。
 聖には、心配かけたくはなかったので、しばらくは一緒に帰れないと伝えてある。

 ――そして、江陽には、体調不良が続いていて、会えないとだけ伝えた。

 私が、周りに心配をかけるのを嫌がると知っているので、素直にうなづかれたが、電話やメッセージは欠かさなかった。
 ヤツ自身、三ノ宮社長の手伝いが徐々に増え始めていて、時間を取るのも難しくなってきていたのだ。

 それでも――お互いに想う気持ちは、欠片も変わってはいない。
 そう思えたから、不安など無かったけれど――。


「お先に。――帰る時は、守衛さんに声かけて行ってくれ」

「ハイ。――すみません、最近、押せ押せになっていて……」

「ああ、まあ、仕方ないとは思うけど、なるべく早く上がってくれよ。体調もあんまり良く無さそうだし、無理は禁物」

「――ありがとうございます」

 私は、座ったまま頭を下げる。

 ドアを閉めた課長を見送り、再び書類に目を落とすが、もう、頭に入ってこない。
 未決の書類は、溜まっていくばかりなのに。

 でも、パフォーマンスが落ちた状態では、時間の無駄か。
 
 ――仕方ない。今日は、もう終わりにしよう。

 私は、書類を揃えて片付けると、大きく息を吐き、立ち上がる。
 瞬間、クラリ、と、貧血のような立ちくらみ。

 ――ああ、もう、頻繁すぎる。血が足りないのかしら。

 ――生理でもないのに……。


 そう思い――息をのんだ。


 ――あれ……?
 ――……先月、来た……?

 ――……いえ、その前……?


 グルグルと、目が回っていく。
 今まで、ありがたい事に、どんなに体調が悪くても、毎月必ずあったはず。


 ――それが――無い……なんて……。



 暗くなった企画課の部屋の中。
 私は、一人――立ちすくむしかなかった。
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