大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
30.さよならも言えずに、消えるのだ
 数時間後――私は、震える手で、持っていたもの確認し――そして、涙があふれた。

 あれから、身体を引きずるように歩きながら、駅前にある大きなドラッグストアまで向かった。

 目的は、ただ一つ。


 ――妊娠検査薬だ。


 爆発するんじゃないかと思うほどに、早鐘を打つ心臓を押さえながら帰宅し、すぐに検査をした。


 ――結果は、陽性。

 ――すなわち――。


 そっと、自分の下腹部に手を当てる。


 ――……ここに――いるのだ。


 ――……江陽と……私の子供が……。


 でも――……。


 私は、その場に崩れ落ち、涙をこぼし続けた。


 予定外の妊娠。

 どんどんパニックになる頭でも、この先の事が簡単に想像できてしまう。

 ――”子供が先”。

 それは、アイツの大叔父さんにとって、再び、江陽に圧をかけるに好機になる。

 ――最悪……跡継ぎと言って、子供が奪われる可能性だって――……。

 私は、思い切り首を振る。

 ――絶対に、アイツの枷には、なりたくない。


 なら――……堕ろさないと……いけない……?


 私は、震える手で、そっと下腹部を撫でた。
 まだ、きっと、朧気でしかない――その子。
 そう思えば――心は、簡単に揺らぐ。


 ――江陽との、子供なのに……堕ろすの……?


「――嫌っ……!!!」


 その考えがよぎった瞬間、反射で叫んで、更に激しく首を振った。


 ――そんな事、できる訳がない!!!


 ……でも……言えるの……?


 ようやく、家族で、しがらみから自由になる準備を始めたのだ。
 それに、水を差すような真似をしたくない。


 ――どうしよう。

 ――どうしたら――……。


 私は、しゃくり上げながら、一人、泣きじゃくる。


 ――……まるで……私が子供になったみたいだ……。



 週末、江陽からの誘いに、体調が戻らないと断りを入れる。
 見舞いに来ると言い張ったが、私が落ち着かないから、と、間違ってもサプライズなどで来ないようにクギを刺した。
 それを素直に受けてくれたのか、メッセージは来ても、ヤツ自身が来る事は無かった。
 妊娠したという自覚はできたが、医者には行かなければならないのだ。
 私は、土曜日に総合病院に向かうと、産科を受診した。

 ――結果は、二か月。

 一瞬、心当たりは、と、思ったが、数え方は最後の生理が終わってからという事なので、逆にあり過ぎて複雑な思いだ。

 よりを戻してから――ヤツの愛は、それまで以上に重くて。
 それを教え込むような愛され方を思い出し、慌てて首を振る。

 原因など、もう、考えない。

 私は、そっと、自分の下腹部に手を当てる。


 ――確かなのは――江陽との子供が、ここにいるのだという事――。

< 127 / 143 >

この作品をシェア

pagetop