大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
日曜には、聖が様子をうかがいに来た。
インターフォンに出るのもおっくうだが、なるべく、ゆっくりと歩く。
私の体調が戻っていないのは織り込み済みのようで、彼女は、二分程を辛抱強く待ってくれた。
「……お、おはよう、聖。……遅くなって、ごめんなさい」
『いいよー、でも、まだ、具合良くない?』
「……ええ、まあ。……やっぱり、しばらくは、大人しくしていないとみたい」
『うん、そうだねー。それが良いよー』
素直にうなづいてくれた彼女に、私は言った。
「でも、アンタは、せっかくの日曜なんだし、楠川さんとデートしてくればいいのに」
『そんなの、心配でできないよー!羽津紀の方が、大事!』
すると、当然の様に返され、胸が熱くなった。
「……ありがとう」
『じゃあ、何かあったら、すぐにメッセージね!』
「わかったわ、本当にありがとう、聖」
お大事にー、と言って、去って行く彼女の気配を感じ、私はため息をつく。
――本当の事を言えない罪悪感は、もう、耐えるしかない。
……こればかりは、聖に伝える訳にはいかないのだ。
彼女には、余計な荷物を背負わせたくない。
私は、昨日、帰りがけに買ったマタニティ雑誌を取り出すと、横になりながら、しばらく見るともなしに眺めた。
――まるで、別世界の話のよう。
まだ、現実味は無いが――現実なのだ。
必要な手続きや、出産準備のアレコレ。
――それを、誰にも見つからないように、一人で準備して――……。
私は、ゆっくりと起き上がると、床に置いたままの本を見やる。
――……知らない土地で産むなら……きっと、気づかれないだろう……。
こぼれていく涙は、もう、止める気も起きなかった。
「――そうかい、受けてくれるかい!」
翌日。朝一番に社長にコンタクトを取り、言われていた役を受けると告げると、もろ手を挙げて喜ばれた。
「じゃあ、出発は――来月からにしようかね」
「承知しました」
私がうなづくと、社長は、最初に向かう地域をもう決めていたようで、地図を渡してきた。
「――まずは、近県からいこうかと思うんだけどね」
そのウキウキした口調に、口元は上がる。
これだけ心待ちにされていたのなら、やりがいはあるはずだ。
「あの、社長」
「ん、何だい?」
「――一つだけ……条件というか……」
私が告げたそれに、社長の表情は変わる。
――けれど、何も言わずにうなづいてくれた。
――……ごめんなさい、こうちゃん……。
私は――さよならも言えずに、消えるのだ。
インターフォンに出るのもおっくうだが、なるべく、ゆっくりと歩く。
私の体調が戻っていないのは織り込み済みのようで、彼女は、二分程を辛抱強く待ってくれた。
「……お、おはよう、聖。……遅くなって、ごめんなさい」
『いいよー、でも、まだ、具合良くない?』
「……ええ、まあ。……やっぱり、しばらくは、大人しくしていないとみたい」
『うん、そうだねー。それが良いよー』
素直にうなづいてくれた彼女に、私は言った。
「でも、アンタは、せっかくの日曜なんだし、楠川さんとデートしてくればいいのに」
『そんなの、心配でできないよー!羽津紀の方が、大事!』
すると、当然の様に返され、胸が熱くなった。
「……ありがとう」
『じゃあ、何かあったら、すぐにメッセージね!』
「わかったわ、本当にありがとう、聖」
お大事にー、と言って、去って行く彼女の気配を感じ、私はため息をつく。
――本当の事を言えない罪悪感は、もう、耐えるしかない。
……こればかりは、聖に伝える訳にはいかないのだ。
彼女には、余計な荷物を背負わせたくない。
私は、昨日、帰りがけに買ったマタニティ雑誌を取り出すと、横になりながら、しばらく見るともなしに眺めた。
――まるで、別世界の話のよう。
まだ、現実味は無いが――現実なのだ。
必要な手続きや、出産準備のアレコレ。
――それを、誰にも見つからないように、一人で準備して――……。
私は、ゆっくりと起き上がると、床に置いたままの本を見やる。
――……知らない土地で産むなら……きっと、気づかれないだろう……。
こぼれていく涙は、もう、止める気も起きなかった。
「――そうかい、受けてくれるかい!」
翌日。朝一番に社長にコンタクトを取り、言われていた役を受けると告げると、もろ手を挙げて喜ばれた。
「じゃあ、出発は――来月からにしようかね」
「承知しました」
私がうなづくと、社長は、最初に向かう地域をもう決めていたようで、地図を渡してきた。
「――まずは、近県からいこうかと思うんだけどね」
そのウキウキした口調に、口元は上がる。
これだけ心待ちにされていたのなら、やりがいはあるはずだ。
「あの、社長」
「ん、何だい?」
「――一つだけ……条件というか……」
私が告げたそれに、社長の表情は変わる。
――けれど、何も言わずにうなづいてくれた。
――……ごめんなさい、こうちゃん……。
私は――さよならも言えずに、消えるのだ。