大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
「――……ありがとう、江陽。……まさか、見つかるとは思わなかったけど……最後(・・)に会えて――うれしかった」

「――……は……?……な、何だよ、それ……」

 江陽は、勢いよく私を離すと、青ざめたような表情を見せた。
 私は、自分のお腹を包み込む。
 そして、ヤツを見上げた。

「――……アンタの枷には、なりたくないの。きっと、この先――大叔父さんのカードになってしまうだろうから……」

「そんなモンはっ……!」

 けれど、江陽は、何かに気づいたように、言葉を切る。
 私でも考えられるような事は、コイツにも、簡単に考えられるはずなのだ。
 いくら、三ノ宮社長が独立しようと――いや、独立したからこそ――大叔父さんは、自分の立場を守るため、江陽への執着を強めるだろう。
 これまでの彼の言動を思い起こせば、答えは簡単だ。

 私は、無理矢理、ヤツに微笑んだ。



「……だから――この子は、私一人で育てるわ」



「羽津紀!!!」



 江陽は、私を引き留めようと、手を伸ばす。
 けれど、それに、首を振って返した。

 ――それ以外の選択肢など、無いのだから。

「――わかってよ……私は、もう、アンタのあんな顔、見たくはないの」

 そのためなら……一生、シングルマザーで構わない。


 ――私が、アンタも、子供も、守るから――……。


 なのに――この期に及んで、江陽は、駄々をこねるように叫んだ。


「わからねぇよ!――わかりたくねぇよ、そんなモン!」

「わかりなさい!アンタのためなんだから!」



「オレのためって言うなら――オレに、お前を守らせろ!!!」



 私は、言い返そうとしたが――言葉が出なかった。


 ――……守る……?

 ――……私を――……?


 しばし、沈黙が続き――江陽は、私の手を取った。
「――……江陽……?」
「……あのな、オレ、うれしいんだぞ?」
「え?」
「――……お前と、オレの子供だ。――……昔から、オレが――ずっと、夢見てた事だ」
「……こう……よ……」

「だから、誰に何て言われようが、お前と子供は、オレが守る。――大叔父さんが、何を仕掛けてこようと――」

 ヤツは、真っ直ぐに私を見つめる。

「――もう、お前も――お腹の子供も、オレの家族なんだよ。……前みてぇな、二者択一じゃねぇ。……わかるよな、羽津紀?」


 ――……私と……この子が……

 ――……江陽の……家族……。
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