大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
玄関を出ようとする江陽は、思い出したように私を振り返る。
「ああ、じゃあ、また、週末に来るから――連絡先だけ、交換させろ」
ヤツは、そう言いながら、ジャケットのポケットからスマホを取り出そうとする。
けれど、私は、あっさりと告げた。
「今、私、スマホは仕事用しか持っていないわよ?」
「は⁉」
ギョッとする江陽は、大きく息を吐く。
「……ったく……じゃあ、次来る時、お前の分持って来るから」
「え」
「オレと同じ機種で良いよな?」
「ち、ちょっと、何言ってんのよ!自分で買うわよ!」
「また、お前は……」
「ハイハイ、相変わらずの痴話喧嘩は、週末にしてもらえるかな?名木沢さんは、これから仕事なんだよ」
言い合いが始まりかけ、片桐さんが、あきれたように仲裁に入った。
二人でバツが悪くなり、口を閉じると、お互いに苦笑いだ。
「――じゃあ、行くから」
「……ええ。――行ってらっしゃい、江陽」
「――……っ……だ……から!お前は‼」
江陽は、頭をかきむしると、玄関先にいた私の腕を引く。
「え」
そして――片桐さんの目の前で、キスをすると――
「この、無自覚天然落とし穴!」
そう言い捨てて去って行った。
「なっ……何なのよ、一体⁉」
バタン、と、閉まるドアを見やり叫ぶ私は、我に返り、後方であっけに取られた彼を振り返る。
「……お、お見苦しいところを……」
そして、肩を縮こませながら真っ赤になって、片桐さんに頭を下げた。
「……いや……まさかの、直球の牽制球だったね……」
「は?」
「いや、こっちの話」
そう言って、彼は、口元を上げる。
私は、仕事用のバッグを持つと、肩にかけた。
今日は、先週からアタックしている会社を、数軒回るつもりだ。
仕事モードになり、私は、不意に気づく。
「そう言えば――片桐さん、どうして、ここに?」
そもそも、何故、彼はここにいるのだ。
昨日からの怒涛の流れに、すっぽりと抜け落ちていたが――。
すると、彼は、苦笑いで言った。
「社長から、伝言を預かって来たんだ」
「え」
目を丸くした私に、彼は更に続けた。
「――そろそろ時期だろうから、落ち着ける場所で休暇に入りなさい、という事だよ。……今のキミを見て、ようやく意味が、わかったよ……」
「――……社長……」
――ああ……やっぱり、気づいていたのか。
けれど……。
「でも、私、まだ――……やる事が……。それに、私が休んだら、企画が止まってしまうんじゃ……」
「うん。――だから、僕が引き継ぐんだ」
「え」
私は、驚いて片桐さんを見上げた。
「――社長から、これを伝えるために――キミの居場所を教えてもらったんだよ」
「……そ……そう……でしたか……」
ようやく合点がいった。
他言無用のはずなのに――そう思ったが。
――仕事を絡められたら――抗えるはずも無いのだ。
「という訳で――今月中に、引継ぎを終わらせようか」
私は、片桐さんを見上げ、ゆっくりとうなづいた。
「――よろしくお願いします」
彼は、口元を上げ、微笑む。
「――……キミの居場所は――ちゃんと、守るから……今は、自分と子供を大事にしていて」
そう言って、片桐さんは、部屋を出る。
「――……ハイ……ありがとうございます……」
私は、うなづき、ゆっくりと、その後に続いた。
陽の光は暖かくなり始め――また、芽吹きの季節がやってくる。
そっと、お腹に手を当てれば、ポコリ、と、返事をするような、胎動を感じた。
「ああ、じゃあ、また、週末に来るから――連絡先だけ、交換させろ」
ヤツは、そう言いながら、ジャケットのポケットからスマホを取り出そうとする。
けれど、私は、あっさりと告げた。
「今、私、スマホは仕事用しか持っていないわよ?」
「は⁉」
ギョッとする江陽は、大きく息を吐く。
「……ったく……じゃあ、次来る時、お前の分持って来るから」
「え」
「オレと同じ機種で良いよな?」
「ち、ちょっと、何言ってんのよ!自分で買うわよ!」
「また、お前は……」
「ハイハイ、相変わらずの痴話喧嘩は、週末にしてもらえるかな?名木沢さんは、これから仕事なんだよ」
言い合いが始まりかけ、片桐さんが、あきれたように仲裁に入った。
二人でバツが悪くなり、口を閉じると、お互いに苦笑いだ。
「――じゃあ、行くから」
「……ええ。――行ってらっしゃい、江陽」
「――……っ……だ……から!お前は‼」
江陽は、頭をかきむしると、玄関先にいた私の腕を引く。
「え」
そして――片桐さんの目の前で、キスをすると――
「この、無自覚天然落とし穴!」
そう言い捨てて去って行った。
「なっ……何なのよ、一体⁉」
バタン、と、閉まるドアを見やり叫ぶ私は、我に返り、後方であっけに取られた彼を振り返る。
「……お、お見苦しいところを……」
そして、肩を縮こませながら真っ赤になって、片桐さんに頭を下げた。
「……いや……まさかの、直球の牽制球だったね……」
「は?」
「いや、こっちの話」
そう言って、彼は、口元を上げる。
私は、仕事用のバッグを持つと、肩にかけた。
今日は、先週からアタックしている会社を、数軒回るつもりだ。
仕事モードになり、私は、不意に気づく。
「そう言えば――片桐さん、どうして、ここに?」
そもそも、何故、彼はここにいるのだ。
昨日からの怒涛の流れに、すっぽりと抜け落ちていたが――。
すると、彼は、苦笑いで言った。
「社長から、伝言を預かって来たんだ」
「え」
目を丸くした私に、彼は更に続けた。
「――そろそろ時期だろうから、落ち着ける場所で休暇に入りなさい、という事だよ。……今のキミを見て、ようやく意味が、わかったよ……」
「――……社長……」
――ああ……やっぱり、気づいていたのか。
けれど……。
「でも、私、まだ――……やる事が……。それに、私が休んだら、企画が止まってしまうんじゃ……」
「うん。――だから、僕が引き継ぐんだ」
「え」
私は、驚いて片桐さんを見上げた。
「――社長から、これを伝えるために――キミの居場所を教えてもらったんだよ」
「……そ……そう……でしたか……」
ようやく合点がいった。
他言無用のはずなのに――そう思ったが。
――仕事を絡められたら――抗えるはずも無いのだ。
「という訳で――今月中に、引継ぎを終わらせようか」
私は、片桐さんを見上げ、ゆっくりとうなづいた。
「――よろしくお願いします」
彼は、口元を上げ、微笑む。
「――……キミの居場所は――ちゃんと、守るから……今は、自分と子供を大事にしていて」
そう言って、片桐さんは、部屋を出る。
「――……ハイ……ありがとうございます……」
私は、うなづき、ゆっくりと、その後に続いた。
陽の光は暖かくなり始め――また、芽吹きの季節がやってくる。
そっと、お腹に手を当てれば、ポコリ、と、返事をするような、胎動を感じた。