大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
 ――先日のお見合いを壊された叔父が、完全になりふり構わなくなってしまって。

 そう、亜澄さんが話し始めたので、私は、口を挟まずに聞く事に徹する。

 あの後、残された大叔父さんは、翔陽くんに、ターゲットを変えた。

 ――江陽がダメなら、翔陽だ。

 そう言って、お見合いの相手を彼に変更させ、あくまで、叶津さんとの縁を繋ごうと必死になっていた。
 何で、そこまで――そう思ったが、叶津さんは、地元の有力政治家。
 何人もの大物議員との縁も深いらしく、それが狙いなのは、誰が見ても明らかだった。
 この先、グループを大きくするのと同時に、自分の権力も更に大きくする。
 その目的のために、適齢期の江陽に白羽の矢を立てたのだ。

 けれど、お孫さんの彼女――妙子さんは、江陽に一目惚れしたと言った。

 ――彼なら、結婚しても良い。

 お祖父さんの叶津さんは、その願いを聞き届けたいと、改めて、大叔父さんの方に話が行ったらしい。

 そこからは、もう、大叔父さんの意思は変わらず。
 江陽が話を受けないのは、私の存在があるから。
 ――けれど、その私が、先日の騒ぎを起こすような女だと知ったので、矛先を家族に変えたのだ。

 ――懐柔の方向で。

 今まで、大叔父さんのせいで、親戚からは距離を置かれていた亜澄さんを、奥様として正式に認める。
 翔陽くんには、もう、接触しない。
 そして、経営の大部分に口を出していたが、相談役からも退き、完全に離れるとまで。

 ――それが、一番、江陽には響くものだと知っているのだ。


『……私達のせいで、あの子に不本意な決断をさせてしまったのは、申し訳無いと思っているわ』

 亜澄さんの、弱々しい声が、電話の向こうから聞こえる。
『……でも――その条件を跳ね返す事が、できないの……』
「――……ええ……」
 今までの事を考えれば、もう、誰に気兼ねするでもなく、三ノ宮社長は仕事ができるし――亜澄さんは、彼の奥様だと、胸を張れるのだ。
『私は、今のままでも良いと思っているの。……でも――翔陽の事を考えると……』
「――……ハイ……」
 このままなら――いずれ、翔陽くんの将来にも影響が出るかもしれない。
 それは、何よりも親として不安なところだろう。
『――羽津紀ちゃん……たぶん、この先、江陽にも私達一家にも、見張りがつくと思うの』
「え」
『叔父の事だから……。――自分の不利になる芽を摘む事に必死なのよ』
「――……わかり、ました……」

 それは……もう、こうやって連絡もできないだろうという事。

 けれど、亜澄さんの立場を危うくしたい訳じゃない。

 私は、彼女にお礼を言って、通話を終える。


 ――そして、その番号を、消去した。
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