仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです

珈琲独特の焙煎された香ばしい香りがする。
カップに注がれた湯気に顔を近づける。
ふわりと優しい湯気が心を和ませる。

私はゆっくりと深呼吸するように湯気を吸いこんだ。

すると霧島社長は得意気に片方の口角を上げた。

「珈琲は淹れた人の気持ちがないと美味しくならないんだ。豆を挽くときも、湯を注ぐ時も、美味しくなれと念じる気持ちが大切なんだ。…どうだ美味しいだろ?」

あまりにも得意気に話す霧島社長に悔しくもあるが、確かにこの珈琲は美味しく優しい味がする。
少し苦みがあるがまろやかで、それはまるで人に興味を持っていないようなふりをして、実は優しい霧島社長を思わせるようだ。

「…はい。とても美味しいです。」

すると彼はふわっと笑顔を見せて沙羅の頭をポンと叩いた。

「簡単なものしかできないが、朝食作るからそこで待ってろ!」

霧島社長がキッチンへと向かうと、沙羅は椅子に腰かけて珈琲を口に含んだ。

考えてみたら、蓮は一緒に住んでいても珈琲を淹れてくれることなんて無かった。
ましてや朝食なんて絶対に自分では作らない。
沙羅が先に起きて朝食もすべて作っていたのだ。


< 13 / 143 >

この作品をシェア

pagetop