仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
珈琲独特の焙煎された香ばしい香りがする。
カップに注がれた湯気に顔を近づける。
ふわりと優しい湯気が心を和ませる。
私はゆっくりと深呼吸するように湯気を吸いこんだ。
すると霧島社長は得意気に片方の口角を上げた。
「珈琲は淹れた人の気持ちがないと美味しくならないんだ。豆を挽くときも、湯を注ぐ時も、美味しくなれと念じる気持ちが大切なんだ。…どうだ美味しいだろ?」
あまりにも得意気に話す霧島社長に悔しくもあるが、確かにこの珈琲は美味しく優しい味がする。
少し苦みがあるがまろやかで、それはまるで人に興味を持っていないようなふりをして、実は優しい霧島社長を思わせるようだ。
「…はい。とても美味しいです。」
すると彼はふわっと笑顔を見せて沙羅の頭をポンと叩いた。
「簡単なものしかできないが、朝食作るからそこで待ってろ!」
霧島社長がキッチンへと向かうと、沙羅は椅子に腰かけて珈琲を口に含んだ。
考えてみたら、蓮は一緒に住んでいても珈琲を淹れてくれることなんて無かった。
ましてや朝食なんて絶対に自分では作らない。
沙羅が先に起きて朝食もすべて作っていたのだ。