仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
少しして社長は湯気がふわふわと上がるお椀を二つ持って戻って来た。
そのお椀を沙羅の前に置くと、お味噌汁の良い香りが部屋に広がる。
「どうせ二日酔いだろうから、みそ汁にしたぞ。家にあった残り野菜だから、期待しないで欲しいが具沢山の味噌汁だ。飲んでみてくれ。」
たしかに二日酔いで何も食べられる状態ではない。
しかし、お味噌汁なら喉を通りそうだ。
ふぅーと息を吹きかけて、一口お味噌汁を口に含んだ。
すると味噌の良い香りが口に広がる。
思わず口角が上がってしまった。
「これなら喉を通りそうだな。どうだ俺もなかなかやるだろ!」
社長がお道化ながら嬉しそうに自分も味噌汁を口に入れた。
その時、なぜか沙羅は急に涙を流し始めたのだった。
社長は驚いて目を大きく見開いた。
沙羅は小さな声で涙の理由を伝え始めた。
「ごめんなさい…驚かせてしまいましたね。私に母親以外でお味噌汁を作ってくれた人はいなかったので…。蓮は…いいや篠宮課長は私にお茶一杯ですら入れてくれなかったのです。なんか嬉しくて涙が出てしまいました。」
霧島社長は沙羅をじっと見つめた。
「こんなもので良かったらいつでも作ってやる。」
沙羅は霧島社長に頷いたが、もう二度とここに来ることは無いだろうと思っていた。