仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです

沙羅は課長代理に社長秘書は自分には荷が重すぎると伝えたが、もう決まったことだと沙羅の意見は聞いてもらえなかった。


秘書課の中でも社長秘書は特別な職務だ。

現在は社長秘書として男性一人が専属で従事している。
その他に秘書課には女性が6名所属しているが、皆が才色兼備の女性ばかりだと噂になっている。
社内では『大奥』と呼ぶ人もいるようだ。

沙羅は、そんな職場に自分では力不足だと理解しており、大きな溜息が出るばかりだった。

しかし、課長代理からすぐに秘書課へ挨拶をするように言われて、沙羅は今、重い気持ちで秘書課の入り口に立っていた。

今までは殆んど接点が無い職場の為、知っている人はいない。
せいぜい顔を見たことがあるレベルの人達だ。

そんなことを考えながらドアの前に立っていると、後ろから女性の声がした。

「申し訳ないけど、そこに立っていられると邪魔なのですが、何か秘書課に用事ですか?」

その声は抑揚の無い冷たい声だ。

沙羅は驚いてその声の方へ振り向いた。
するとそこにはグレーのタイトなスーツを颯爽と着こなす美しい女性が立っていた。
しかし、無機質な声同様に無表情で沙羅を見ている。とても恐い雰囲気だ。

「あ…あの…私は秘書課に異動になりました、七海沙羅と申します。今日はご挨拶に…」

その女性は沙羅の言葉を聞いて、少し驚いた様子を見せたがすぐに目を細めて沙羅を直視した。

「あなたが社長のご指名で社長秘書になったと話題の女性だったのね…。」


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