仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
車は30分程街の中を走ると、ガラス張りの大きなオフィスビルの前で止まった。
ここは沙羅も知っている大企業だ。
高柳に続き、社長がビルに入っていく。
私も急いで二人に置いて行かれないよう追いかけた。
会社受付には女性が二人座っており、私達に気が付くと急ぎ立ち上がりお辞儀をした。
高柳が何かを言う前に受付の女性が笑顔で話し始めた。
「霧島社長、お待ちしておりました。ご案内いたします。」
受付の女性は頬を赤くしてなんだか嬉しそうに見える。
霧島社長や高柳さんは他社でも人気のようだ。
私達は案内されたエレベーターに乗り、ビルの最上階へと進んだ。
エレベーターを降りると真正面に大きな扉があり、そこには社長室と書いてあった。
案内してくれた女性がドアをノックすると、中から少し年配の男性のようなしゃがれた声が聞こえて来る。
「どうぞ入ってくれ。」
霧島社長、高柳に続き沙羅が社長室へと入った。
するとそこには50代から60代くらいの男性が立ちあがり私達を迎えてくれた。
髪はグレーで体の大きな男性だ。
霧島社長が先に声を出した。
「前原社長、お久しぶりです。」
前原社長と呼ばれたその男性は、笑顔で握手の手を差し出した。
「霧島社長、本当に久しぶりだね。今日は君に会うことを楽しみにしている女性がお待ちかねだよ。」
霧島社長は表情を変えずにゆっくりと話し出した。
「本日は御社の所有する土地のリゾート開発の件で伺ったのですが。」
前原社長はハッハッハッと大きく声をあげて笑った。
「君も固いね…もちろんその話もあるが…娘が先週留学から帰って来て君に会いたいと言ってきかないんだよ。」
霧島社長は厳しい表情をした。
「そのお話は以前にもお断りしているはずです。お嬢様には申し訳ございませんが、ご期待には沿えません。」
霧島社長の言葉を聞いて、前原社長が急に表情を変えた。眉間に皺を寄せている。
「この、二つ星不動産は君の父親のアジアングループにも昔から協力して来たんだ。恩を仇でかえすような物言いには気を付けた方がいいな。」