仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
霧島社長の言葉に動けなくなった蓮は、呆然と立ち尽くしていた。

そして社長は急に私のほうへ振り返った。

「七海沙羅さん…だったかな。もうこんな結婚式に出席している必要は無い。さぁ行こう。」

驚きで言葉を失っている私の腕を掴むと社長は速足ですたすたと歩き始めた。

「あ…あの…ありがとうございます。もう大丈夫です。」

私が社長に声を掛けると、彼は私の方をみて微笑んだ。

「こういうときは一人でいない方が良いぞ。付き合うから一緒においで。」

突然のことに驚いたが、社長の優しさに張り詰めた糸が切れてしまったように自然と涙が溢れ始めた。
目の前は涙でゆらゆらと景色が揺れている。

彼は駐車場へと私を連れて行くと、白い高級車の前に止まり、その助手席のドアを開けた。

「送るから乗って。そんな泣き顔じゃ電車に乗れないだろ。」

社長は少しお道化たように話しながら、私の頭をポンと優しく叩いた。
どうやら私を送ってくれるらしい。

「…ありがとうございます」

私は彼の言葉に甘えることにした。
運転席に座る霧島社長。
蓮が王子と言われるなら、霧島社長は美しい魔王という感じだろうか。
眉目秀麗な男性だが、瞳やキリリとした眉に意思の強さを感じる。
すっきりと伸びた高い鼻筋、少し薄い唇。
美しく設計されたような顔をしている。

社長をこんなに近くで見たのは初めてだが、前髪を上げてセットした髪型も艶やかさを感じてしまう。



< 5 / 143 >

この作品をシェア

pagetop