仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
多岐はお味噌汁、だし巻き卵、青菜の御浸しなど美味しそうな和食を朝食に用意してくれていた。
「沙羅、多岐の味噌汁だけは一級品なんだ。飲んでみてくれ。」
北斗が嬉しそうにお味噌汁を見ながら沙羅へと勧めた。
「本当に美味しそうな良い香りがします。いただきます。」
北斗と沙羅が食卓に着くと多岐が微笑んだ。
「ありきたりな家庭料理ですが、どうぞお召し上がりください。おかわりもありますよ。」
沙羅はお味噌汁を一口飲んで、突然に思い出したことがあった。
「北斗さん、このお味噌汁の味は…私が初めてこちらに来た朝に作ってくださった、あのお味噌汁の味にそっくりです。とても美味しくて優しい味です。」
北斗は嬉しそうに口角を上げた。
「そうだったな、二日酔いの沙羅に具だくさんの味噌汁を作ったんだよな。多岐の味に似ているとは俺も腕をあげたな。」
「まぁ、坊ちゃま…ではなく旦那様、お味噌汁をお作りになったのですね。そういえば昔私が料理を作っていると、興味深く見てらっしゃいましたね。」
多岐も北斗が自分の味に似たお味噌汁を作ったことにとても嬉しそうにしている。
可愛い孫を見ているおばあちゃんのような表情だ。
「沙羅、もう少しで二つ星不動産との決着をつけられそうなんだ。それまでは悪いが会社は危険なのでここに居てくれないか。」
「…はい。わかりました。あの…北斗さん…あまりご無理や危険な事はなさらないでくださいね。」
北斗は沙羅にふわりと笑顔を見せると、食卓から立ち上がった。
「大丈夫だ。沙羅は心配するな。」