仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです

ホールの中は沢山の人で溢れている。
そして、北斗へ挨拶に来る人も多く挨拶だけでも大変な人数だ。
しかし北斗は慣れているのか、次から次へと受け答えをしている。

(…北斗さんすごい、私なんて目がまわりそうなのに…)

「沙羅…大丈夫かい?疲れていたら少しそこの椅子に座っていてくれ。一通り挨拶が済んだら迎えに行くから待っていてくれ。」

北斗が見つけてくれた椅子は、ちょうど柱の陰になっていて目立たない位置に置かれている。
ここなら誰かに気づかれず休めそうな場所だ。

そして沙羅は今のうちに化粧直しもしておこうと考えて、女性トイレへと向かった。
すると入り口でばったりと会ってしまったのは、蓮の妻となった間宮茜だ。
茜はアジアングループ会長の姪にあたると聞いている。
北斗の父親は社長だが実力を認められて抜擢されたと聞いているので、北斗と親戚では無いのだ。

「あらぁ、七海先輩お久しぶりです。今日は社長のお供できたのかしら…七海先輩って男の人を誘惑するのが上手ですよね。蓮に振られてすぐに霧島社長に取り入るなんて羨ましいわ。私だって霧島社長の方が良いもの!ねぇ、蓮を返したら社長と取り替えてくれる?」

茜は何を言っているのだろう。
冗談を言っている表情ではない事に恐怖を感じてしまう。

「茜さん…何を言っているの。あなたは篠宮課長とご結婚されたじゃないですか…取り替えるなんて冗談でも言えないですよね。」


「なによ、良い子ぶって…蓮はカッコいいから欲しかったのだけど、結婚してみたら真面目すぎて面白味がない男なのよね。絶対に霧島社長の方がクールでお金持ちだし…なんであんたばっかり良い男が寄って来るのよ。イライラするわ。」


茜は沙羅に向かって手を振り上げた。
沙羅はもう避けられないと思い平手打ちに備えて目をぎゅっと閉じて身構えた。

しかし、少し時間が経ったがどこにも平手打ちは来ないし痛みも無い。

沙羅はそっと目を開けて見た。

そこには、茜の後ろから腕を掴んだ里香がいたのだった。

「里香さん!」

里香は怪訝な表情で茜を見ながら話をした。

「沙羅ちゃん、大丈夫?…ところでこの子誰?沙羅ちゃんを殴ろうなんてとんでも無いわよ。」

茜は里香に掴まれた腕を振りほどいた。

「あんたこそ誰なのよ!いきなり腕を掴んで痛いじゃない!」

茜は里香を睨みつけると勢いよくトイレから出て行ってしまった。

「沙羅ちゃん、大丈夫だった?」

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