魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
 元々そんなにものを持ってきたわけではない。夕食前には、荷物をまとめるのも終わってしまった。

(今日が最後、か)

 ベッドにぽふんと座ったアリーセは二週間ほど滞在した部屋を見回す。おそらくラウフェンの王宮を再び訪れることはないだろう。あったとしても、すごく先のことだ。
 こんこん、と部屋の扉がノックされる。レナールだろうか?

「フィンさん?」

 予想とは違い、部屋を訪れたのはフィンだった。

「ブラッツ殿下がお話があるそうです」
「ブラッツ殿下が?」

 フィンは相変わらず無表情で、それがいい話か悪い話かはよくわからない。

「はい。昨日の件で少し話を伺いたいことがあるそうです。子爵にも許可はとってあります」
「わかりました」

 状況などアリーセが話さなければいけないこともあるだろう。アリーセはうなずいた。胸元に職員章がついていることは確認する。

「では私についてきてください」

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