魔女と忌み嫌われた私、売られた隣国で聖女として次期公爵様に溺愛されています
「本当に開き直ったよね、君。特にラウフェンに行ってから」
「――危機感を覚えたんだ」

 レナールが不本意そうに唇をすぼめる。

「レナールが危機感を覚えるなんて、ほんと、アリーセ嬢はたいしたものだよ」

 ユーグが楽しそうに笑った。

「幸せにね。二人とも。あ。そうそう。ラウフェンの新王太子殿下からレナールに連絡が来ていたよ。近日中にラウフェンに来てほしいっていう話が来るんじゃないかな」
「レナール様、ジギワルド様と連絡を取っていたんですか?」

 初耳だった。

「……ユーグ」
「いいじゃない。悪いことを企んでいるわけでもないんだから。むしろ秘密で進める方が不誠実だと思うよ」

 レナールはうなり声に似た声を上げると、それから深く息を吐き出した。

「向こうに魔法の、特にロストの専門家はいないから協力しているだけだ」
「ありがとうございます」

 レナールが協力してくれるのならば、ジギワルドも心強いだろう。希望が見えた気がして、アリーセは思わず微笑む。

「……なんだかんだいっても、君の故郷だからな」
「その気持ちがとても嬉しいです」

 レナールはアリーセをじっと見つめると、ふうと大きく息を吐き出した。

「踊ろう。アリーセ」
「まだ踊るんですか?」

 突然のレナールの申し出にアリーセは驚く。

「全然踊り足りない。君は俺のものだってことを、存分に見せつけておかないと安心できない」
「そこまで心配しなくて大丈夫ですよ。それに、私を気にするとしたらきっと私が聖女だからですよ」
「君は自分のことを過小評価しすぎる。言っただろう。君はきれいだ」

 本当に最近のレナールはストレート過ぎて困る。でもそれが嬉しいのも確かで。

「ほら行くぞ」
「はい」

 アリーセは満面の笑みで大好きなレナールの手を取った。

 聖女として隣国の次期公爵様と相思相愛で婚約する。
 一年前の自分が知ったら、きっと驚くだろう。そんなことを思いながら。

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