女王陛下は溺愛禁止!
「リアンシェードの密偵か?」
 ならば訓練されたエリートのはずだ。凡庸な見た目は他のメイドに溶け込むためか。そのわりには気配を消すこともなかったからそれほどの俊傑(しゅんけつ)には思えない。

「警戒するに越したことはない、か」
 ラドウィルトは調査を続行するように指示書を作成した。

***

 クライドは翌日には意識を取り戻し、ラドウィルトは執務室でアンジェリアに報告した。
「医療官の見立てでは快方に向かうだろうとのことです。神官の治癒魔力がなければ危なかったとこぼしていました」
「そうか……」
 アンジェリアは安堵の息をついた。

「見舞に行かれますか」
「そうだな」
 執務の途中ではあるが、アンジェリアは席を立つ。
 ラドウィルトを伴って医務室に行くと、彼はベッドで横になっていた。
 彼女に気がつくと体を起こし、笑みを浮かべて迎える。が、顔は青白く生気がない。

 アンジェリアは頭を下げた。
「こたびはまことに申し訳なく存ずる。同時に心からの感謝を申し上げる」
「お気になさらず」
 答える声はかすれて、聞き取りづらかった。

「早く帰っていただくべきであった。このような事態になるなど」
「予期はできぬものです。貴女を守れるのなら命など惜しくない」
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