女王陛下は溺愛禁止!
「さようなことはおっしゃいますな。重傷を負われたのだ」
「軽傷でございますよ」
 クライドは平気なそぶりを見せるが、医療官は面会の中止を申し渡した。アンジェリアの前では彼が無理をするからだ。

 短い見舞いを終えて執務室に戻ると、リアンシェード大使の訪問を告げられた。
 大使もまたクライドの見舞いに訪れ、アンジェリアへの面会を申し込んだのだ。
 予定外ではあるが、アンジェリアは応じた。

 ラドウィルトを伴って大使の待つ貴賓室を訪れる。
 部屋に入ると大使は慇懃に一礼し、アンジェリアに勧められるままに対面してソファに座る。
 アンジェリアが掛けた後ろにはラドウィルトが立った。

「こたびは危難に見舞われたところを殿下に救っていただき、深く感謝申し上げる」
 口上に、大使はにこやかな笑みを見せた。
「いたみいります。陛下の玉体が殿下の尽力によりましてご無事であられましたこと、幸甚(こうじん)にございます」
 恩着せがましい大使の言葉にアンジェリアは神妙な顔をしてみせる。

「まことに殿下は義勇に溢れたお方。貴国の未来は明るいものでございましょう」
「殿下におかれましては捨て身で陛下をお庇い申し上げたとのこと、並々ならぬ情がおありの上だと愚考いたします」
「ええ、並々ならぬ義勇であらせられる」
 言い直すアンジェリアの言葉が聞こえないかのように大使は続ける。

「それほどまでのお気持ちを募らせておいでであるならば、なにとぞ成就をお願い申し上げたく存じます」
 つまりはクライドと結婚しろと、大使はそう言っているのだ。
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