女王陛下は溺愛禁止!
「御芳恩には感謝申し上げます。ですが……」
 ラドウィルトが口をはさむ。
「貴殿に聞いてはおりません」
 大使は強気に制し、アンジェリアを見る。

「美辞で飾り立てたところで栓なきこと。警備の不備による責は貴国にあると存じます」
 言われたアンジェリアの眉がぴくっと震える。
「その件に関してはおっしゃる通り。我が宮で暴漢に襲われる事態は我が方の手落ち。お詫び申し上げる」

「ご理解、感謝いたします。ならば殿下のお気持ちもご理解いただけることと存じます。両国民は歓喜するでしょう。愛のために命を賭した王子と女王の恋物語に感動せぬものはおりますまい」
「わが身の婚姻について他国の大使ごときの指図は受けぬ」
 アンジェリアははねつけるが、大使は表情を変えない。彼女は続ける。

「だが、クライド殿とは今一度、よくよく話をしてみよう。クライド殿は人品優れたお方、お話も盛り上がることであろう」
 つまり、前向きに縁談を検討するということだ。最初に大使に抗弁したのは、言われたからではなく自発的に検討したという体面を保つためだ。大使もそれがわかっているから反論せずに続きを待った。

「おふたりの幸祐(こうゆう)、ひいては両国の万福(ばんぷく)にもつながります。これ以外に道など見えぬこととは思われますが、どうぞ色良きお返事を」
 会談を終えると、大使はアンジェリアとラドウィルトに見送られて部屋を辞した。このあとは侍従が彼を門まで送っていく。
 残されたアンジェリアはため息をついて額に手を置いた。

「責任をとって結婚しろと言われるとはな」
 予想できたことではあるが、憂鬱な事態だ。

「どうなさるおつもりで」
「結婚するしかあるまい」
 吐き出された言葉はラドウィルトを驚かせるには充分だった。
< 102 / 204 >

この作品をシェア

pagetop