女王陛下は溺愛禁止!
 ひとつの可能性にいきあたり、アンジェリアは愕然とした。
 そんな、まさか。
 アンジェリアは震えた。

「違う、これはそういうものではない」
 アンジェリアの声は弱々しく落ちた。
 月光に照らされたアンジェリアの顔は青白く、生気が失せていた。

***

 自室に下がったラドウィルトは、やるせなく壁を殴った。
 だん! と音がして、タペストリーが震える。

「わかっていたことだ」
 あえて声に出してみるものの、心の内には嵐が吹き荒れる。

 これまで数々の縁談を持ちかけたのは自分だというのに、いざそれが現実となるとこうも苦しいとは。
 身を裂かれたほうがまだましだ。胸の痛苦はまったく体の痛みを伴わず、それが辛苦を激増させていると思えてならない。

 型通りの言葉では無理だ。この苦衷をどう表現したらいいのかわからず、慟哭すらできない。
 アンジェリアを愛する気持ちにはとうに気付いていた。
 自分は側近として侍ってはいるが、大きな功績を上げたわけではなく、彼女と自分との結婚は気持ちひとつでどうにかできるものではない。

 そもそも、臣下として務めると病床の前王に誓った。だから誰もが認める最上の男を夫に用意して、彼女を立派な女王にしなければならない。自分が結婚したいなど、それを裏切るものだとしか思えない。

 だから気持ちを押し殺してアンジェリアに仕えて来た。
 アンジェリアが結婚に消極的ですべての縁談に難癖をつける、その状態に甘んじていた。
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