女王陛下は溺愛禁止!
 大使の言う通り、女王の命を救った王子との恋物語は両国をより良い形で近付け、盛り上がるだろう。
 彼は文武に優秀であると評判だ。リアンシェードではもちろんソルディノアノスでの人気も高い。
 これほどの良縁はない。

 なのに。
 どす黒いものが沸くのを止められず、ラドウィルトは拳を握りしめる。
 叛乱が起きたときには徹底抗戦を勧めた。それがアンジェリアの独身宣言につながるともわからずに。

 彼女の幸せを奪ったのは、つまりは自分ではないのか。
 だからこそ彼女の幸せを願い、結婚を願った。
 相手を厳選したのは決して嫉妬からではないと、そう思って――いや、思おうとしていた。

 なぜあの場を離れてしまったのか。
 悔恨がラドウィルトに襲いかかる。

 メイドに襲撃されたとき、自分がいれば守れたのに。
 もし万が一。
 同時に、空想が巡る。

 もし自分がアンジェリアをかばって刺されていたならば、彼女は同様に責任をとる形で結婚を選択しただろうか。
 思って、彼は自嘲の笑みを浮かべる。
 ありえない。なによりも自分がそれを却下する。
 アンジェリアの足枷にはなりたくない。幸福な女王になってもらいたいのだから。

「なにやってんの」
 エアがひょいと顔を覗かせる。
 のんきな顔に殺意がわくが、こんなものはやつあたりだ。
< 108 / 204 >

この作品をシェア

pagetop