女王陛下は溺愛禁止!
「だが、俺の気持ちは陛下には伝えるな。それくらいの慈悲の心、神ならば持っているだろう」
「慈悲、ねえ」
 言いながら、エアは空中で宙返りをする。

「そのくらいはしてあげてもいいけど。人間って命が短いくせに回り道ばっかりするね。いっそクライドと決闘くらいしたら面白いのに」
 エアはつまらなさそうに部屋を出て行った。

「隣国の王子と戦うなど……ありえない」
 アンジェリアの治世に暗い影を落としかねない。そんなことになるくらいなら己を殺した方がどれだけましかわからない。
 ラドウィルトは棚の扉を開けると、ウィスキーを瓶から喉に流し込んだ。

***

 翌日、アンジェリアはラドウィルトの酒臭さに顔をしかめた。
「お前が深酒とは珍しい」
「面目ございません」
「殊勝なのもまた珍しい」
 アンジェリアは苦笑をもらす。

「今日ぐらいは休んでいいぞ」
「いえ、仕事させていただきます」

「ならばもう少ししゃきっとしろ」
「申し訳ございません」
 ラドウィルトは眉を寄せて背を伸ばした。

「あっれー、ラドウィルト、調子悪いー?」
 急に現れたエアがラドウィルトの耳元で大声を出す。
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