女王陛下は溺愛禁止!
 そのまなじりからは胸からあふれたものが雫となってぽとりと零れた。

 もっと前に気付いていたなら、すんなりとラドウィルトと結ばれただろうか。
 いや、とアンジェリアは思う。
 もっと前に、気付いていたはずだ。だが、それに蓋をした。
 そうして、自分で機を逃した。怖かったから。

 叔父たちは愛ゆえに道を踏み外した。
 ラドウィルトが自分を受け入れてくれなかったら、という恐怖もあっただろう。主従の関係が壊れたらきっと彼は去ってしまう。
 自分を愛してくれた母も父も、先に逝ってしまった。妹は結婚して、アンジェリアよりも大切な存在ができた。愛はアンジェリアの周囲から消える一方で、これ以上大切なものをなくしたくはない。愛さなければ消えることはない。無意識にそんなふうに思っていたのかもしれない。

 さらに、罪悪感から幸せになってはいけないと枷をつけた。
 贖罪とも言えないその気持ちに嘘偽りはない。そんな気持ちを抱えた自分ではラドウィルトの気持ちが自分に向いていたところで、彼との結婚を自分に許すことはできなかっただろう。

 幸せになってはならないならば、クライドと意に染まぬ結婚をしたほうが自分にふさわしい。
 そう思ってから、頭をぐしゃぐしゃとかきむしる。

 結婚を罰としてとらえている。
 そして、罰に巻き込まれるのは気の毒なクライド。好意を向けてくれているのに、彼との結婚を罰の象徴にするなど、彼への汚辱でしかない。

 彼はどういう理由であろうと、結婚したならば自分を幸せにすると言ってくれているのに。
 アンジェリアはただ頭を抱え、静かに涙をこぼした。
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