女王陛下は溺愛禁止!
とはいえ、真逆の評価があるのも知っている。冷酷にして厳正。男には潔癖で誘いはすべて断るという。実際、叛乱を収めてからというもの、その治世はゆるぎない。真に悪女であるならばとっくに政治は崩壊しているはずだ。いや、男にだらしがないだけで政治手腕はしっかりしているという可能性もある。
どの噂を信じるかは人によって変わるだろう。彼はどれも信じていないつもりだが、やはり悪い噂のほうが心には残る。
十年前のそのとき、自分はまだ四十過ぎ、田舎で小さな部隊の警備隊長をしていた。
叛乱の制圧に招集された将軍は、一度は引退していた尊敬する老将だ。
彼の采配で戦えるなら負けはないと安堵したことを覚えている。勝てる戦いならば自分が生き残る確率も高くなる。
果たして自分は生き残り、宮殿の警備総隊長を務めるまでになった。今でも訓練は欠かさず、部下からの信頼も得たと自負している。ぴっちり軍服を着こみ、部下の手本になるように心がけ、仕事もきっちりとこなしている。
今は亡き老将が信じた女王を信じたい気持ちはある。が、その人となりはそばに侍るわけではないので、わかりはしない。
大輪の薔薇のような容姿は目立つため、凛とした姿は記憶には残っている。だが、それだけで忠誠を誓えるほど彼は安くない。
グレイソンを名指しで会いたいと言われて、彼の執務室に女王が案内された。
部屋に通された彼女は今日も美しい。凛として咲き誇る青薔薇。
質実剛健な部屋に彼女はまったく異質だった。片隅にある質素な応接セットに案内すると、固いソファに優雅に腰をかける。
ソファの質に文句のひとつも出るかと思いきや、まったくなにも言わない。
意外に思いながら対面に掛ける。秘書がお茶を出して下がると、グレイソンは口を開いた。
「わざわざのお越し、いたみいります。どのようなご用件でございましょう」
「ラドウィルトの件だ。捜査のまとめはお前だな?」
グレイソンは顔をしかめた。
どの噂を信じるかは人によって変わるだろう。彼はどれも信じていないつもりだが、やはり悪い噂のほうが心には残る。
十年前のそのとき、自分はまだ四十過ぎ、田舎で小さな部隊の警備隊長をしていた。
叛乱の制圧に招集された将軍は、一度は引退していた尊敬する老将だ。
彼の采配で戦えるなら負けはないと安堵したことを覚えている。勝てる戦いならば自分が生き残る確率も高くなる。
果たして自分は生き残り、宮殿の警備総隊長を務めるまでになった。今でも訓練は欠かさず、部下からの信頼も得たと自負している。ぴっちり軍服を着こみ、部下の手本になるように心がけ、仕事もきっちりとこなしている。
今は亡き老将が信じた女王を信じたい気持ちはある。が、その人となりはそばに侍るわけではないので、わかりはしない。
大輪の薔薇のような容姿は目立つため、凛とした姿は記憶には残っている。だが、それだけで忠誠を誓えるほど彼は安くない。
グレイソンを名指しで会いたいと言われて、彼の執務室に女王が案内された。
部屋に通された彼女は今日も美しい。凛として咲き誇る青薔薇。
質実剛健な部屋に彼女はまったく異質だった。片隅にある質素な応接セットに案内すると、固いソファに優雅に腰をかける。
ソファの質に文句のひとつも出るかと思いきや、まったくなにも言わない。
意外に思いながら対面に掛ける。秘書がお茶を出して下がると、グレイソンは口を開いた。
「わざわざのお越し、いたみいります。どのようなご用件でございましょう」
「ラドウィルトの件だ。捜査のまとめはお前だな?」
グレイソンは顔をしかめた。