女王陛下は溺愛禁止!
「単純に考えるならばラドウィルトを陥れたい者だろう」
 アンジェリアの即答にグレイソンは眉を寄せる。暗殺が失敗を前提としているのか否かでも捜査の先行きは変わるが、ラドウィルト以外が犯人だと確信している彼女のそれは揺るがないだろう。

「クライド殿下を亡き者にして、ラドウィルトをはめて、それで利がある者を探せとおっしゃる?」
「そなたらの負担を増やすのはわかっておる。だが、慎重に、正確に検分を行ってもらいたい。その上であやつが犯人と判明したならば私の不明だ」

「警護の情報を流した者がいるのは明白。立場上、ラドウィルト殿が一番の容疑者であることは変わりません」
「そなたはまるでラドウィルトが犯人と思うておるようだな。わが城の警備隊はかように思い込みと憶測で動くものであったのか? もっと理性的なものだと思うておったわ」
 いっそ侮蔑すら含んだ声に、グレイソンはむっとした。

「陛下こそ、捜査に私情を挟んでもらっては困りますな」
 これだから女は。
 彼は内心で見下し、あきれたように言った。

「私がそのような生ぬるい女と思うてか」
 ぎろり、と女王の目がねめつける。
 グレイソンは一瞬たじろぎ、すぐに威厳を正す。

 だが、内心では動揺が続いた。
 兵に侮られては総隊長などできない。であるから、ひと睨みで威圧できるほどの貫禄は身に着けている。
 その自分がただ王であるというだけの女に圧倒されるなど。

「私情をはさんでおるのはそちらであろう。女ごときに指図されるのが気に入らぬと」
「決してそのようなことは」
「ならば心して聞け」
 女王の声が玲瓏と響く。
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