女王陛下は溺愛禁止!
「くそ……」
 ラドウィルトはもがくが、どれだけもがいても縄は外れない。
 虜囚にされたのはまだ利用価値があると思われているからか。

 今のところ、直接的に魔力で殺されることはなさそうだ。それが可能なら、花瓶を落とすなどまどろっこしいことをせずに首を折るなどして殺しているはずだ。
 魔力がそのようになっているのか力が足りないのかはわからない。直接殺すことへのためらいがあるのかもしれない。だが、とりあえずは急に命を奪われることはないだろう。

「誰か! いないか!」
 叫んでみるが、返答はない。
 口輪がないところからしても、誰にも声が届かない場所なのだろう。

「こんなとき、エアならば縄を切り壁をすり抜けていくのだろうに」
 自嘲気味にひとりごちて、思いつく。
 エアは会話に名が出て来ただけで現れた。

「エア! 聞こえるか、ここに来てくれ!」
 声が虚しく部屋に響く。返事は当然、ない。
「エア! お前は神なのだろう! ならば聞け! ここに来い!」
 ただひとりで叫ぶなどはたから見たら狂人だが、今は可能性にかけるしかない。

「エア! それともお前はただの奇術師か!」
「失礼だなあ」
 むっとした声とともに、エアの声が響く。

「俺のこと、呼んだ?」
 気がつくとエアが部屋にいた。宙に浮かんで床に倒れるラドウィルトを見下ろしている。月のように淡く発光していて、ほんのりと照らされた。
 部屋は石壁に囲まれた狭いものだった。物はなにもなく、鉄製の頑丈なドアがあるだけ。まるで独房だ。
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