女王陛下は溺愛禁止!
 叔父は実際のところ、我が子を王座につけたかったようだった。愛する息子のため、息子の王座を切望した妻のため。
 それを知ったのは叔父の遺書だった。だから頼むと家族の助命嘆願を乞うものだったが、聞き入れず処断した。中心人物以外の処刑には血を吐く以上の苦しみがあった。処刑の前夜は眠れず、あとにも眠れず食事もとれない日々が続いた。ラドウィルトがいなければ決して乗り越えられなかっただろう。

 謀反を起こさないでいてくれたら、とアンジェリアは今でも思う。
 もし正直に王座が欲しいと言ってくれたなら、譲っていたかもしれない。玉座の重責はアンジェリアをいつも圧し潰そうとしていたのだから。

 だが、もはや引き返せない。
 アンジェリアは『冷血女王』の名にふさわしいほどに必死で国政をになった。
 結果、厳しいけれどもまっとうな治世を敷く女王と噂されるほどにはなった。

***

 アンジェリアは即位後のことを大まかに語り、紅茶で喉を潤した。弱みとなりかねない内心の葛藤は話さなかった。
「大変だったんだねえ」
 エアは感心しながらもクッキーを頬張り、目を輝かせた。

「おいしい! 次はどれにしよう」
 エアは右手でアップルパイ、左手にパウンドケーキを持ち、どちらを先に食べるか悩む様子を見せた。
 のんきな様子にアンジェリアは苦笑する。

 女というだけで侮りを受けることはいまだにある。未婚であることがそれに拍車をかけた。
 世継ぎがいない国は不安定さを抱えている。国民は謀反による戦乱を忘れてはいない。
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