女王陛下は溺愛禁止!
 時間を計るものはない。そもそも時計があっても明かりがないから見えない。
 せめて窓があればと思うが、ただ暗い。

 空気が淀んでいて気分が悪くなる。気持ちは落ちこむ一方だが、気持ちはコントロールできるはずだ、そう信じて平静を心がける。
 かつてはここに政敵や重罪犯を監禁したのかもしれない。人道のない時代なら窓のない部屋に閉じ込めるなど平気で行われただろう。

 いもしない化け物や怨霊が暗闇に見えそうで、ずっと目をつむっている。
 それらが怖いわけではない。化け物がいると思ってしまう精神状態に陥るのが怖いのだ。

 眠らないように思考に没頭する。
 そうして、アンジェリアが結婚するならば仕事が増えるな、と思う。

 ウェディングドレスの発注、式場や披露宴会場、招待客、料理の選定。パレードや警備の手配も必要だ。
 大切な彼女の式にはすべてを極上で揃えたい。ドレスの試着ではクライドよりも先に見て、リハーサルでは自分が彼女の隣に並んでやろう。それくらいは許されてしかるべきだ。

 エアは自分も出席させろとうるさいだろうか。式の妨害を画策するだろうか。
 彼が乱入して誓いを邪魔するさまを考え、くすりと笑う。
 そういうときでもお菓子でつられて大人しくなってくれるだろうか。さすがにお菓子では無理だろうか。ウェディングケーキを見たら誰よりも先に食べたがりそうだ。

 ……果たしてエアはアンジェリアに伝えてくれただろうか。
 ふと思い出して不安が芽生える。

 助けが来ないのは、彼が伝えていないからか。アンジェリアが無視しているのか。
 安請け合いをしておいて、エアはもう忘れているのかもしれない。
 あるいは、マリオンと手を組んでいるのか。
 誰にも知られずに閉じ込めているなら、あとは簡単にラドウィルトを殺せる。水も食料も差し入れなければいいのだ。
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