女王陛下は溺愛禁止!
「私は今、ラドウィルト殿をかくまっております。彼に逃げるようにと説得してくださいませんか。このままでは彼は処刑されてしまいます」
 クライドは驚愕した。

「そのようなことを私に言うのですか」
 他国の、しかも被害者の自分に容疑者の逃亡を説得させようとするとは。
「殿下が陛下のみならずラドウィルト殿とも親しくしておいでだったと聞いております。私ひとりでは説得に応じていただけず、居室から無理矢理に別の場所へと移っていただきました」
「なんという無謀をなさることか」
 クライドはあきれた。

 ラドウィルトは逃亡したとみなされるだろう。火に油だ。
 彼は儀典局の勤めだと聞いている。いくら策謀とは無縁とはいえ、逃亡が立場を悪くするくらいわかるだろうに。
 いや、焦りで見るべきものを見落とし、先行きを間違える者も多い。人は完璧ではないのだから。

「陛下はご存じで?」
「いえ、私の独断です。陛下はまっすぐな御気性、このような方法を好まれません」

「そうでございましょうね……」
「こうでもしないことにはラドウィルト殿をお助けできないと思ったのです。妻も心配して憔悴しておりまして」
 苦渋を満たしたマリオンはすがるようにクライドを見た。

「体調が万全ではないのは存じております。かような申し出が常軌を逸しているのも承知しております。ですが、どうか、お願い致します」
 懇願に、クライドは迷う。

 手を貸すべきではない。自分は貴賓であり、自身を危うくしていい立場にはない。
 だが、ラドウィルトが犯人だとは思い難い。多少なりとも接して、暗い策略を巡らす人間ではないことはわかっている。ましてや疑いが向くような拙い計画など。
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