女王陛下は溺愛禁止!
「陛下はラドウィルト殿を信じておられるご様子です。が、お立場上、証拠もなく放免するわけにはいきません。行き違いのままに処分が下されては不幸が重なってしまいます」
 悲し気なマリオンに、クライドは頷いた。すでに事態は動いている、次善の策をとるしかない。

「とにかくもラドウィルト殿のご無事が優先ですね。逃げた先の手配はできているのですか」
「もちろんです」
 マリオンはほっとしたように相好を崩した。

「部屋の警備は私がくらましますので、その隙に」
 クライドが頷くと、マリオンは立ち上がる。
 続いたクライドは傷のある腹を押さえた。
「お体、痛みますか?」
 気遣いに、彼は首をふる。

 ラドウィルトが処刑されたなら、アンジェリアはどれほど傷付くだろう。冷徹と噂される彼女の本質はわかっている。欲望に塗れた宮殿で過ごして来た王族ともなれば心を許せる存在は貴重で、だからこそ、そういう者に贔屓をすることは許されない。
 逃亡に対して、威信を保つために非情な決断をする場面も出て来るだろう。彼女にそのようなつらい思いをさせたくはない。
 まずはラドウィルトを完全に逃がし、安全を確保させなくてはならない。

「参ります」
 決然とした声に、マリオンは力強く頷いた。



 クライドはマリオンとともに人目を避けて宮殿の地下へと降りる。隠されたような入口だった。かつての王族の逃亡用の隠し通路だ、とマリオンは説明した。彼がその存在を知ったのは、妻レイジェリーナの(げん)による。
 明かりはマリオンの持つカンテラのみで、足元を照らすのが精いっぱい、先行きは見えない。
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