女王陛下は溺愛禁止!
「陛下が、余計なことをなさるから」
 マリオンの目が暗く光る。
 直後、床に落ちた短剣が飛んだ。

「危ない!」
 ラドウィルトがアンジェリアをかばい、彼をかすめた短剣は天上に当たって落ちた。
 兵が魔力を発してアンジェリアとクライドの前に壁を作る。
 マリオンは両脇の兵を魔力で吹き飛ばし、短剣を魔力で自らの手に戻す。次いでクライドの防御壁を作っていた兵を吹き飛ばし、短剣をクライドの首にあてがった。彼を狙ったのはアンジェリアより近くにいたからにすぎない。

「殿下の命が惜しければ下がれ!」
 クライドはもがくが、魔力で押さえつけられているようでうまく動けないようだった。
 アンジェリアは舌打ちした。彼は再度の襲撃で開いた傷をふさいだばかり、あまり動けばまた傷が開く事態になりかねない。

「陛下、申しわけない」
 クライドの声に苦渋が混じる。
 普段のクライドならばこの程度の拘束はものともしないだろう。だが、傷の影響で万全ではない上に、マリオンの魔力の拘束もあるために振りほどくことができずにいるようだ。

「やむを得まい。道をあけろ」
 唸るようにアンジェリアが言い、兵がずれて道が生まれる。
 マリオンは警戒しながらクライドの体を魔力で起こし、兵に囲まれながら油断なく歩く。マリオンひとりでラドウィルトをここに連れて来られたのも魔力のおかげか、と内心で唸る。だが、そうなればマリオンには協力者はおらず、ひとりで凶行に及んだということになる。

 マリオンは部屋を出た直後、扉を蹴って締める。
 直後、どん! と大きな音がして部屋が揺れた。
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