女王陛下は溺愛禁止!
「花瓶を落としたのはそなたか」
「そうですよ、魔力を使えば遠隔でできますからね。偶然にもメイドが陛下を襲ってくれたときには、未遂に終わって残念でした。せめてクライド殿下だけでも殺しておいてくれればよかったものを、我が国の医療官も治癒魔力も優秀ですね」

「俺を階段から突き落としたのもお前だったのか?」
 ラドウィルトの問いに、マリオンは頷く。
「ちょうど通りかかりましてね。こんな好機は二度とないと思いました。ですが、数段を落ちるだけで済むとは運のいい男です。陛下を結婚させようと躍起になっているばかりか、本人も結婚相手の候補として名前が挙がっている。いっそ消してしまえば良いと思ったのですよ」
 アンジェリアは歯噛みする。こんな男を信頼し、妹を預けていたなんて。

「リストンの男は簡単でした。少し脅したらすぐに逃げ帰る、たわいのないことです」
 マリオンは侮蔑の笑みを浮かべた。

「クライド殿下の再襲撃はお前が手引きしたのか」
「そうですよ。暗殺未遂のせいで結婚が決まりそうでしたからね。皮肉なことです」

「下手をしたら戦争になるとは思わなかったのか」
「陛下ならば無事に収めることでしょう。私は陛下を信じていますからね」
 アンジェリアはぞっとした。ここで「信じる」と言われるとは。

「最初は誰も殺すつもりはありませんでしたよ。だからリストンのバカ男には脅しだけでした。クライド殿下も脅すだけで帰っていただくつもりでしたが、王宮に滞在することになったのは予定外でした。ましてや陛下と親交を重ねるなど」
「宿の襲撃など、お前がどうやって」

「ごろつきを雇っただけのことです。二度目の暗殺はメイドに倣って陛下を恨んでいる者を探しました。陛下を貶めるためなら命もいらないと、喜んで乗ってくれましたよ。手引きが多少めんどうでしたが」
 マリオンは大きくため息をついた。
< 169 / 204 >

この作品をシェア

pagetop