女王陛下は溺愛禁止!
「せめて、先にクライド殿の短剣を抜いてくれないか。見ているだけでひやひやする。どうせ魔力でどうにでもなるんだろう?」
「……良いでしょう」
 マリオンが言うと、短剣がひとりでに抜けて床に落ちた。

 ほっとしたアンジェリアは祭壇でペンをとり、マリオンの口上の通りに文面を書いていく。
 マリオンの澱みなさに、ずっと文面を考えていただろうことがわかった。
 最後にサインをして渡すと、マリオンは満足そうに笑みを浮かべる。

「あとは、あなたがたに死んでいただくだけですね」
「やはりそうなるか」
 アンジェリアはとっさに短剣を拾う。
 直後、刃先が自身を向く。マリオンの魔力によるものだ。アンジェリアは目に見えない力に抵抗して刃を遠ざけようとするが、とどめるのがやっとで刃は動かない。

「陛下!」
 ラドウィルトが声を上げるが、彼はなにかに押さえつけられたかのように動けない。
「三人で無理心中という筋書きにしましょうか。さきほどの兵どもはみな天上の崩落で死亡しているはず。陛下は確かな証拠を得るまではと私のことを伏せていたでしょう。ならば真実を知る者はおりますまい」

 アンジェリアは歯噛みした。
 確かにマリオンのことは伏せていた。慎重な性格が裏目に出たようだ。

「兵は生きているぞ。お前の悪事は彼らに伝わっている。今頃は応援の兵を連れてこちらに向かっているだろう」
 アンジェリアのはったりに、マリオンは動じない。
「ならば彼らも殺すまで。ラドウィルト殿が乱心して陛下とクライド殿下を、目撃者を殺して自殺。これでみなに説明します」
< 171 / 204 >

この作品をシェア

pagetop