女王陛下は溺愛禁止!
「助かりたいからって、それはどうなの。アンジェリアが俺に愛を誓えばいいだけなんだ。俺はたっぷりアンジェリアを愛して幸せにしてあげる。そもそもこんな目に遭わせない。お前、アンジェリアが好きなんだろう? だったら好きな女の幸せのために身を引くくらいのことできないわけ?」
「それが真に陛下の願いならば、そうしよう」
 ラドウィルトは毅然と言い返す。

「だが、陛下は国とともにあることを望んでいる。ならばその願いを叶えるのが家臣として、そして愛を捧げる者の務め」
 アンジェリアは絶句した。
 今、愛を捧げると言われたような。
 彼女の驚きに構わず、ラドウィルトは続けた。

「私はエアの真の名を知っている。だから我らを助けよ」
「は!?」
 エアは愕然と彼を見た。アンジェリアもまた驚いて彼を見る。

「神を脅すとか、たいがい不遜だよね。お前ごときが俺の名前を知ってるわけないし」
「だが事実、知っている。真の名を知られると支配されると聞いている。ほかのものに知られたくなければ我らを助けよ」

「やだね。仮に知ってたとしてもここでお前が死ねば他の人には伝わらないし」
「俺は手紙に貴殿の名を残して来た。俺が帰らなければ手紙が開封され、貴殿の真の名が世に知られる。貴殿は神ではなく人に使役される奴隷になりさがるぞ、それでもいいのか」
「お前ごときが……」
 その瞬間、彼は真冬の水晶のような鋭い光を目に宿した。

「俺を怒らせたね」
 エアの目に射抜かれ、彼は凍ったように身動きがとれなくなった。

 軽薄な神であると思っていた。そこに侮りがなかったと言えば嘘になる。
 だというのに、今この気迫はなんたることか。気の弱い者ならばこの視線だけで心の臓が止まるだろう。
 だが、ラドウィルトは目を逸らさない。
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