女王陛下は溺愛禁止!
 彼は挑戦的に口元に笑みを浮かべている。
 彼のリードはラドウィルトに劣らず踊りやすかった。
 ダンスを終えて礼を交わすと、周囲からは拍手がわいた。

「そなたのおかげで場の空気を変えることができた。礼を言う」
「陛下の瞳に映ることができた光栄、この身の喜びでございます。できましたらその御手にキスをするお許しを」
「仕方あるまい」
 アンジェリアが手を差しだすと、クライドは跪いてその手にキスをした。

「なにそれ、いいなー。俺もやりたい」
 エアがまぜっかえしてくる。
「お前にはやらせん」
 アンジェリアは即答する。

「ずるいー」
「変わった道化を侍らせておいでで」
「気晴らしは必要かと思ったところ。エア、花のひとつでもくれないか」
「いいよ」
 エアが手をふると青い薔薇が手の中に発生した。その茎と葉は金色だ。

「アンジェリアのイメージで作ったよ」
 受け取った彼女はそれをクライドに差し出す。
「これで礼になるか」
「謹んで賜ります」
 クライドはかしこまって受け取り、胸元に飾る。

「アンジェリアのために作ったのに!」
 エアが抗議するが、彼女は無視する。
「会はまだ続く。楽しまれていかれよ」
「ありがたく存じます」
 クライドは礼をして下がり、アンジェリアは玉座に戻った。
 このあとはダンスに誘う男性は誰も現れず、退屈に舞踏会を過ごした。
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