女王陛下は溺愛禁止!
「ゆるりとおくつろぎいただきたいところですが、殿下も御多忙でしょう。ご帰国はいつなりとお申し付けください。お帰りの際はわが優秀なる近衛に送らせましょう」
 さっさと帰れ、と匂わせて言うと、クライドはにっこりと笑みを浮かべた。

「ご厚意、感謝いたします。ちょうどゆるゆると休暇をいただいたところでございまして、お言葉に甘えてゆっくりと陛下との親交を深めさせていただきたいと存じます」
 アンジェリアはひきつりそうになる口の端に笑みを固定させた。帰る気はない、構ってくれ、と言われてしまった。

「さようでございますか。私は多忙ゆえおかまいできませんが、ちょうど道化を雇ったところ、殿下の憂いを晴らすためにもお呼びいたしましょう」
「陛下にお相手いただけぬとはわが身の不徳といたすところ。若輩であるゆえならばこの身を呪い、運命を呪いましょうぞ」
 年下だからって門前払いは勘弁、と言われても年齢の問題ではなくアンジェリアには彼の相手をする気はない。

 かつて恋物語に憧れた頃はリードしてくれる年上がいいな、なんて思っていたが、いつしかそんな幻想はなくなった。
 かといって年下に甘えられたいわけではない。王配となる人柄を見極めるために時間を割くなど、なおさらしたくない。

「俺のこと呼んだ?」
 いないはずの人物……神の声に、アンジェリアはびくっとした。
「エア、どうしてここに?」
「呼ばれた気がして。あ、この人見たことある」
 エアは虹色の瞳をクライドに向ける。

「舞踏会でお会いしているかと存じます。クライド・フィルア・バートライドと申します」
「エアだよ。だけど舞踏会じゃなくてさ……そうだ、アンジェリアが持ってた本の挿絵の人に似てる!」
「エア!」
 アンジェリアが咎めるが、エアはその程度では止まらない。
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