女王陛下は溺愛禁止!
「それで、どのようなご用件でしょうか?」
 クライドは待ってましたとばかりに包みを差し出す。
「街で見つけまして。お好みなのではないかと」
 アンジェリアは怪訝に手を伸ばすが、一瞬早くラドウィルトがそれを受け取る。

「私は陛下にお渡ししたいのですが」
「いったんはお預かりさせていただきます」
「警戒されてますね」
 クライドは口の端だけで笑い、ラドウィルトは油断のない笑みを返す。

「臣下の努めなれば、お許しくださいませ」
「良き臣をお持ちであられる」
「お誉めいただき、ありがたく存じます」
 皮肉交じりの言葉に、アンジェリアはあえて笑みを返す。

「できましたら今すぐご確認願いたい」
 言われたラドウィルトが包みをほどくと、中から本が出て来た。
「これは!」
 アンジェリアは目を輝かせてそれを奪う。

「溺愛小説の女神、ジャスミナ・フィンベルの初回限定版! ファンの間では幻と言われている初期作品の!」
「たまたま見つけましてね。お喜びいただけたようで」
 彼の忍び笑いに我に返り、アンジェリアはすまし顔を作る。

「あ、ありがたく存じます。庶民の娯楽を知ることは政務に関係しますゆえ」
「お気に召していただけたようで嬉しく存じます」
 クライドの今度の笑顔は本心からのようで、アンジェリアは少なからずときめいた。
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