女王陛下は溺愛禁止!
 あの小説のヒーローが目の前で微笑している錯覚に陥ってしまう。小説の彼はいつもたくましくヒロインを守り、ときに甘く囁き、世の女性をきゅんとさせている。

「ご用件が以上でいらっしゃるのなら、これにて失礼を。陛下はお忙しいので」
 ラドウィルトが丁寧に言うと、クライドはフッと笑う。

「了解いたしました。また陛下のお好みのものを見つけましたら、お贈りいたします」
 アンジェリアは曖昧に頷き、辞去の言葉を述べてから部屋を出た。

 見送るクライドはくすくすと笑い、呟く。
「こうもたやすくて良いのか」

 その上、茶会では。
 クライドは思い出す。

 ふたりきりになった一瞬に発せられたレイジェリーナの提案。
 それに乗らない手はなかった。

 アンジェリアの趣味の情報もありがたく利用させていただいた。
 風は自分に吹いている。
 クライドはにやりと笑みをこぼした。
< 60 / 204 >

この作品をシェア

pagetop