女王陛下は溺愛禁止!
 ステンドグラスの手前の石碑、それこそが悪神の封印だった。石板に古代の文字でなにか彫られているが、今は劣化して読めなくなっている。
 この石碑に王族の者が手を当てながら呪文を唱えることにより、封印を強化する。それは王族だけが可能であり、課された責務でもあった。

「やったことにして帰ってもバレないよな」
「私が見ておりますから。きちんと行ってください」
「そなたは真面目よな。結婚もしていないのに小姑がいる気分だ」
 アンジェリアは肩をすくめる。

「そう思うのでしたら、ちゃんと結婚してください」
「そうしたら小言を言わぬか?」
「姑のように言って差し上げます」
「意味ないじゃないか」
 アンジェリアはため息をついて石碑に手をついた。

「そもそも結婚に意味など感じない。いっそ舞踏会で宣言しよう。我は神にこの身を捧げる、とな」
 直後、石碑から閃光が走った。

「なんだ!?」
「陛下!」
 ラドウィルトはアンジェリアの前に出てかばう。

 やがて光が収まると、ひとりの青年が立っていた。虹色に輝く銀髪をなびかせ、その目は同じく七色に輝く銀。細おもては中性的で繊細。
 衣裳は古風。キトンの上に細かなひだのついたヒマティオンを纏い、白銀の留め金(フィビュール)を使って左肩で留めている。
アンジェリアは呆然と彼を見つめた。
 まるで純粋な水晶。曇りなく透き通ってきらめき、魅了する。だけど先端は鋭利で、油断すると人を傷付け血を流す。
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