女王陛下は溺愛禁止!
 護衛をつれたクライドが現れると彼女は立ち上がって迎えた。
 彼は今日もまた贈り物を用意していた。
 包みを開けると三本のガラスペンと美しい装飾のインク瓶があった。ガラスペンは花を封じ込めたようなもの、ラメの入ったもの、宝石を閉じこめたようなもの、三種の軸が入っていて、どれも職人の技がひと目でわかる優れものだ。

「政務のひとときが少しでも心浮き立つなるものになりますよう、心をこめて選びました」
「ありがたくいただく。お帰りの際には相応のものをお贈りする」
「土産が目的ではないのですよ」
 甘さを含んだ目と声で言われ、アンジェリアは目を逸らす。

「礼をくださるのでしたら、私に御名(みな)を呼ぶ名誉をくださいませ」
 名を呼ぶということは親しさの表れともなる。
「まだ我らは知り合うたばかりゆえ」
「……失礼いたしました。勇み足でございましたね」
 クライドは優雅な笑みを浮かべて謝罪し、アンジェリアはいたたまれない気持ちになった。

「しかし私ならば陛下のお役に立てましょう。お迷いがおありならなんなりとおっしゃってください。迷いの霧を晴らしてごらんにいれます」
「必要ない」
「これまたつれないお返事であられる」
 クライドはくすくすと笑う。

「妹御に、この四阿は陛下の思い出の場所と聞き及びました。そのような場所にお招きいただいたのは光栄でございます」
「単にほかに場所がなかっただけだ」
 脳裏に家族でお茶をしたときの光景が浮かび、ちくんと胸が痛んだ。笑顔の両親たち、無邪気な妹。今はないかつての幸せ。
 だが彼女は毅然と続ける。
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