女王陛下は溺愛禁止!
「つれないお言葉ばかり。あなたの心を溶かすには太陽であってもかなわぬかもしれませんね」
「おわかりいただいたなら、お帰りになられよ」
「いいえ。太陽にできぬことでも私にできぬということにはなりません」
 あきらめの悪い、とアンジェリアはあきれた。

 ふと目の隅に動くものを捉えてそちらを見る。
 乾いた洗濯物をかごいっぱいに載せた下級メイドたちが歩いていた。
 庭をつっきって近道をしているのだろう。本来なら許されない行為だ。
 黙って見逃そうかと思ったが、声が聞こえるに至ってそういうわけにはいかなくなった。

「女王様はまた今日も男を侍らせてお茶会ですって」
「ほんっと男好きよね」
 小バカにした口調は、まったくアンジェリアに気付いていないからだ。

「たまたま王家に生まれたってだけで贅沢三昧」
「うらやましいったらないわ」
「小鳥の鳴き声が聞こえたと思えば、下品に喋々(ちょうちょう)しいことよ」
 アンジェリアの言葉にメイドたちが振り返り、表情が凍り付く。

「小鳥のさえずりは美しくあるべきだ。汚い鳴き声しか出せぬなら、その舌、切り取ってもかまわぬな?」
 アンジェリアの冷笑に、メイドたちは謝罪の余裕もなく震え上がる。すぐさま跪いて詫びを述べたいところだが、王宮に届ける洗濯物を地面に置くわけにもいかずに震えるしかできない。

「陛下、苛烈なお言葉は彼女たちには毒となりましょうぞ」
「我が宮のことゆえ、他国の方の指図は受けぬ」
 傲然と返すアンジェリアに、クライドは眉を上げた。

「殿下のお目汚しとなる。さっさと立ち去れ」
 アンジェリアが命じると、メイドたちは慌てて走り去った。
 その背を見送ってから、アンジェリアはクライドに目を向ける。
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