女王陛下は溺愛禁止!
「しばらく下がれ。用があればまた呼ぶ」
 命じられたラドウィルトはぐっと拳を握り、言葉を飲み込む。
「かしこまりました」
 慇懃に頭をさげて、彼は無表情で退室した。

 パタン、と閉められた扉を見つめ、アンジェリアはため息をつく。
 ラドウィルトのことは信用している。だからこそ男女の仲になどなりたくない。せっかく築いたものが崩壊しそうで怖い。
 彼の申し出は、国を憂えてのことにすぎない。だから心を乱されてはならない。

 いつだってふたりで国のことを考えて来た。衝突もした。彼は泣きわめく自分をなだめるときもあったし、泣いてもどうにもならないと叱ることもあった。
 方針が違うためにずっと険悪な空気が続く日もあった。
 だが、彼が自分を支えてくれている、それだけはいつも確信を持つことができた。

 いつだっただろう。パーティーを開くか否かでもめたことがある。
『パーティーよりも橋の再建が先だ!』
 叫ぶアンジェリアにラドウィルトが怒鳴り返す。

『その出資者を募るためですよ!』
『その費用を橋にかけろ、出資者は別で募れ!』

『パーティーのほうが結果として効率よく費用を稼げるのですよ!』
 お互い若かったから、頑として主張を譲らず、最終的にはラドウィルトが資料を持って来て説明し、アンジェリアが納得した。

 いつでも彼は真剣に補佐してくれて、だから全幅の信頼を置くことができた。
 いっときの感情で彼を失いたくない。

「こういうときこそ、エアが引っ掻き回してくれればいいものを。そう都合よくはいかぬな」
 ひとりごちたそれは、ラドウィルトのいない執務室に寂しくこぼれた。
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