女王陛下は溺愛禁止!

***

 執務室に現れたラドウィルトからの知らせに、アンジェリアはほっと息をついた。
「やっとあの王子殿下が帰国するのか」
「期限が来たので、明後日こちらを経つ予定とのことです」

「助かった。これであの者と結婚せぬと理解してもらえるだろう」
 ラドウィルトがいつもと変わらない様子だったことにも安堵した。
 エアは大人しく部屋のソファでラドウィルトが持ってきたお菓子をかじっている。

 さきほどまではアンジェリアの政務中に話し掛けてきて邪魔で仕方がなかった。まったく、来てほしいときには来ずに、来てほしくないときに現れて厄介だ。
 だが今、ラドウィルトとふたりきりにならず、気まずくならずにすんでいるのも事実だ。

「明日の晩餐が最後だな。それまで丁重にもてなすように侍従に伝えてくれ」
「かしこまりました」
 いつも通りの慇懃さで答え、彼は退室した。
 ほっとするアンジェリアの耳に、「あ」と間の抜けた声が聞こえた。

「お菓子、もうなくなっちゃった」
 しょんぼりとつぶやくさまに、アンジェリアはくっと笑う。
 いくらこちらが深刻になっていてもエアはマイペースでかまうことがない。

「厨房に頼んできたらどうだ。もう馴染みになっておるのだろう?」
「まだ残ってるといいなあ。新作の試食とか頼まれたら喜んでやるのに」
 エアはひょいっと立ち上がるとそのままドアをすり抜けて出て行った。

「存外、役に立っている」
 ふふっと笑い、アンジェリアはまた政務に戻った。
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