女王陛下は溺愛禁止!
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ラドウィルトは無表情で廊下を歩いていた。
王配の件では頭が痛いばかりだ。
ふさわしい人物が誰であるのか、ずっと考えて来た。
だが、もし本当にアンジェリアが誰かを選んだとして、自分は納得できるだろうか。
誰であったら納得するのか、想像がつかない。
クライドならば、と一時は思ったものの、心の底では納得がいっていない。
どうしてなのかはわかっている。だが、それを表に出すことは許されないはずだった。
であるにも関わらず、王配への名乗りを上げてしまった。だが彼女には配慮であり本気ではないと思われてしまった。
このまま誤魔化しておいたほうがいいのか否か。
迷いながら下りの階段へと踏み出したとき。
後ろから衝撃を受け、ラドウィルトは段を踏み外す。
幸いにして数段を落ちただけですみ、とっさに階上を見る。
「あれ? なにしてんの、大丈夫?」
ひょいと顔を覗かせたのはエアだ。
「人間って階段から落ちると死ぬんじゃなかったっけ?」
美しい顔でとぼけたことを言う。
「そうです。死ぬ可能性があります」
ラドウィルトは油断なくエアを見ながら立ち上がる。
エアは神出鬼没だ。神の力とやらで宙を浮くことができるし、なにやら隠している様子もある。まだラドウィルトの知らない力を持っているに違いない。
たとえば、誰にも見られずに人を突き落とすとか。