女王陛下は溺愛禁止!
 クライドは立ち上がり、アンジェリアの前に跪いた。
「なればこそ、陛下には我が気持ちをご理解頂きたく存じます。私は子ではなく、陛下の愛を欲しております。陛下には真心からの愛を捧げ奉ります」
「どのように言葉を変えようと返事は変わらぬ」
 アンジェリアは席を立ち、池を望む。

「ならば私も同じことを申し上げましょう。なんど断られても私の気持ちは変わりません」
 笑みのこもった声とともに席を立つ気配があった。
 そのまま彼はアンジェリアの隣に立つ。

「背を向ける程度にはご信用くださっているご様子」
「護衛のいる場でめったなことはしないと思っているだけだ」
「それもまた信用でございましょう。根底からの信を得るためにはさらなる時間がかかりましょうが、私は成し遂げてみせる所存です」
 アンジェリアが不快に目を向けると、甘い笑みに迎えられた。

 キャラメル色の髪が風にそよぎ、セピアの瞳は宝石よりも強く輝く。
 アンジェリアは魅入られたように彼を見つめた。

 なにかを言わなければ。拒絶の言葉を。
 そう思うのに、喉はなにも言葉を通してくれず、胸のうちにぐるぐると同じところを走り続ける。

 クライドのしなやかな腕がアンジェリアの頬へと伸び、彼女はとっさに一歩を引いた。
 四阿の華奢な柵にあたり、バランスを崩す。

「危ない!」
 クライドに抱き留められ、その腕に包まれた。
 広い胸の中、アンジェリアの鼓動が早鐘のように脈打つ。
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