女王陛下は溺愛禁止!
「貴女は存外、危なっかしい。この手でお守りいたしたい」
 声はどこまでも甘く優しく耳に響く。

「この華奢な肩に、細腕に、国の命運がかかっている。だが、貴女はそれを厭わず背負い、国政を担ってこられた。尊敬せずにいられません」
「お誉めいただき、ありがたく存ずる」
 アンジェリアは離れようとするが、クライドはぎゅっと力をこめて離してくれない。
 背中にまわった手は力強い。自分にはない、強い力。

「国を守る貴女を……いえ、なによりもひとりの女性として、貴女をお守り申し上げたい」
 吐息が首筋にかかり、アンジェリアはびくっとした。

「しかし、貴殿は私もよりも歳が……」
「歳などなんの意味がありましょう。どうかわたくしめに今一度のチャンスを」
 アンジェリアの心がぐらりと揺れる。

 国を守ることばかりを考えて来て、そんな自分はいつも守られて来た。兵士に、貴族に、ラドウィルトに。
 だが、それは女王だからだ。ただのひとりの女なら、守られることはない。
 彼女と対等な立場に立ち、ひとりの女にできる男などこの国にはいない。

 彼ならば。
 アンジェリアは彼を見上げる。
 王族である彼ならば、王族の重責も理解している。立場が違うからと遠慮をする様子もない。超えられるはずのない年齢差でさえ踏み越えようとしている。

「十七で国を背負う、その責は重かったことでありましょう。貴女の荷を少しでも減らしてさしあげたい」
 確かに重かった。なんとも言えない重さがずっと自分にのしかかっていた。

 だが、決してひとりではなかった。必ずラドウィルトがいて、彼こそが一緒に背負ってきてくれた。
 ほかにも支えてくれた臣はいるというのに、最初に浮かぶのは必ずラドウィルトだ。
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