女王陛下は溺愛禁止!



 宮中はにわかに騒がしくなった。
 医務室に運ばれたクライドは医療官の手当てを受けたのち、駆け付けた神官によって治癒の魔力を注がれた。

「一命はとりとめましたが、予断を許さない状況です。現在、医療官、神官がつききりで看護にあたっております」
 アンジェリアはラドウィルトの報告に青ざめたまま頷いた。

「リアンシェードへの報告は」
「首相が大使館へ出向かれて説明されましたが、厳重な抗議を受けました」
 警備の不備を非難されたが、これに関しては反論の余地がない。王宮内ということでクライドの護衛も気を抜いていたようだが、主たる責任はソルディノアノスにある。

「私をかばったのだ、厚くお礼を申し上げねばならん。賠償はかなりのことになろうな」
「今はそのようなことおっしゃいますな」
 ラドウィルトは無表情でアンジェリアを見る。

「彼の方にひかれておいででございましたでしょう。さぞごご心配のこととお察し申し上げます」
「……ひかれてなどいない」
「ご無理なさいますな」
 そうでなければ説明がつかない。アンジェリアがクライドをはね退けず、抱きしめられたままになっている事態なんて。

「ご心痛のことと思いますが、政務は滞りなく成し遂げていただかなくてはなりません。可能なものは延期、もしくは代行できるようにいたします」
「必要ない。犯人はどうなった」

「取り調べを進めております。現状の調べでは個人的な恨みで、背後は特にはないようです」
 本当に単独犯なのかはさらに捜査が必要だ。女王を亡き者にしたい何者かが彼女の恨みに便乗して手引きした可能性は否定できない。

「先日の、クライド殿下やリストンの自称王族への襲撃とは関係ないのだな」
「関係ないと思われます。花瓶の件も知らぬようで」
 報告に、アンジェリアはため息をもらす。
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