女王陛下は溺愛禁止!
「個人の恨みでよく入れたな、上級メイドは身の保証がなければ入れぬだろう」
「下級メイドとして潜入したようです。洗濯メイドとなり、隙を見て上級メイドの衣装を盗み、今日、暗殺を決行したようです」

 洗濯は重労働だ。だから人手が足りず、採用されやすい。洗濯場は宮殿からは離れているし、洗濯物を運ぶ先も執務を行う区画からは遠く、宮殿内で仕分けをするのはまた別のメイド、女王の部屋をしつらえるのは侍女が立ち合いで上級メイドが行う。下級メイドが女王の前に出ることは基本的にはないのだ。

「直に話し掛ける、緊張で震えている、予兆はあった。止めようとしたが間に合わなかった」
「ご自身を責めてはなりません」
 ラドウィルトの声に、アンジェリアは顔を歪める。

「私への恨みとは、なんだったのだ」
「謀反の件でございます」

「討伐されたどこぞの貴族の令嬢か?」
「一般市民でございます。農夫だった父親がロマスの率いる叛乱軍に徴兵され、陛下の正規軍と戦い、殺されたと。逆恨みもいいところです」

「恨みに正も逆もなかろう。当人にはすべて正しき憤恨(ふんこん)だろうからな。しかしなぜ今」
「当時は幼くなにもできなかったところ、最近になって洗濯メイドの求人を知り、復讐心を燃やして応募したそうです」

「……裁判にかけるが、死刑だろうな」
「王族を狙い、リアンシェードの王子を瀕死に追い込んだですから、間違いなく」
「そうか」
 アンジェリアはため息を落とした。

「言っておきますが、同情など」
「していない」
 アンジェリアは先を封じた。
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